(2)トレンチ調査−椋本M1地区

図2−3−5参照)

(1) トレンチの地層構成

トレンチTM1は主断層FM1の断層崖で掘削した。

トレンチで見られた地層は、下位より段丘礫層(G1)、礫層(G2)及びこれに付随する砂層(Sd)、砂礫(Sg)、シルト(Sil)である。さらに上位に土壌(暗褐色土S1、黒色土S2、及び表土・耕作土S3)がのる。SdとSilの境界は不明瞭である。

礫層G2の礫種、粒径はG1とほぼ同様であるが、基質が淘汰の悪い黄褐色のシルト質砂であるのに対し、G1の基質がマサ状で淘汰の良い花崗質砂を含む点で異なる。

土壌S1〜S3には広域テフラAT,Ahの混入が認められたが、Silには検出されなかった。これは、SilがAT以前の堆積物であることを示唆するものである。したがって、Silの年代はAT以前、G1以降で、2.2〜5万年前となる。

なお、黒色土S2(土壌)の年代は約4500年前であった。

(2) 地質構造

N面の座標No.6〜8の底部で、段丘礫層G1を切る西上がりの逆断層が発見された。ここでは礫層G1の上面に食い違いがあり、G1のラミナが10°余り東に傾斜するのに対して緩く西に傾斜する破断面があるため、断層と判断した。この破断面はせん断に伴う細粒化によるもので、礫層G1内では破断面に沿って扁平礫が再配列し、砂層内では微妙な暗褐色の細い筋(幅3〜5mm)が認められる。断層の走向・傾斜はN21°W/24°W〜N26°W/25°Wで、傾斜方向の変位量は約0.8mである。断層は礫層G1から砂層Sdまで延びるがその延長部は不明である。G1は東側(座標No.3〜6)でほぼ水平であり、断層上盤側の東に傾斜するラミナは断層変位に伴う撓曲構造と見られる。

また、G2は東へ25〜30°傾斜して堆積していることから、崖錐性の堆積物と判断した。

(3) 断層活動の考察

トレンチで見出された断層は段丘礫層G1及びSdを切っているが、Silの上面を変形させているかどうか判別し難く、断層活動年代の上限は不明である。

G2の成因はここでは明確ではないが、前述のように崖錐性であることから、トレンチ西方に形成された撓曲崖から崩落した可能性が高い。

以上のことから、本トレンチでは、Sd堆積後に段丘礫層G1を変位させる断層活動があったと推定される。また、G2の崖錐堆積物を生じさせる活動があった可能性もあるが、詳細は不明である。

なお、ボーリング調査(前述)から、段丘礫層堆積途中にも断層変位があったと推定されている(段丘礫層の層厚変化から)。したがって、本トレンチにおける断層活動は

@ 段丘礫層G1堆積途中に礫層を変位させた断層活動

A Sd堆積後に、トレンチ内で段丘礫層G1を変位させた断層活動

の2時期と判断される。

断層の活動年代は@がG1の形成途中、すなわち約5万年前以前である。また、Aは約5万年前以降、現在までと推定される。