(2)地質調査

調査地に分布する地質は、以下のように大別される(表1−2−1参照)。

・ 新期領家花崗岩類及び領家変成岩類:粗粒花崗閃緑岩類と片麻岩

・ 新第三系中新統堆積岩類(鈴鹿層群及び一志層群):砂岩、シルト岩と礫岩

・ 新第三系鮮新統堆積岩類(東海層群):やや固結した砂、シルトと礫

・ 段丘堆積物:未固結の礫と砂

・ 沖積層:未固結の礫と砂

調査地西側はほぼ南北に山地が連なり、その東縁に丘陵地と平野が広がる。山地の大部分が新期領家花崗岩類からなり、一部、津市の長谷山に領家変成岩類が分布する。丘陵地には新第三系とこれを覆う段丘堆積物、主要河川沿いには沖積層が分布する。

領家変成岩類はジュラ紀に堆積し、白亜紀後期に広域変成作用を受けたと推定される(吉田ほか、1995)。

表1−2−1 地質層序概要表

白亜紀後期には、花崗岩類が貫入した。

中新統は鈴鹿層群と一志層群に区分される。両層群は、大局的に下部に礫岩が卓越し、上方へ向かって砂岩やシルト岩が優勢となる上方細粒化の岩相を示す。鈴鹿層群は花崗岩類を不整合に覆い、関町白木一色から芸濃町忍田北方まで分布する。一志層群は、下位の花崗岩類・変成岩類及び鈴鹿層群を不整合で覆い、関町萩原から調査地南端まで分布する。上位は東海層群と段丘堆積物などの第四系によって不整合で覆われる。

鮮新統の東海層群は、岩相の特徴から陸成層*1(湖沼成〜河川成)と考えられる(吉田ほか、1995)。調査地北端から南端にわたり丘陵地に広く分布する。主に礫・砂・シルトなどからなり、下位の中新統と比較して固結度が低い。

調査地には、ほぼ南北に一志断層が分布する。山地と丘陵地の境界部(調査地北部、安濃町と津市の境界周辺)では、一志断層は花崗岩類及び変成岩類と新第三系の境界をなし、丘陵地では鮮新統東海層群を切る。また、津市の長谷山東方山麓では段丘堆積物を切るため、一志断層の活動が第四紀後半まで及んだ可能性がある。

一志断層の東側には、これとほぼ平行する白木断層(宮村ほか、1981)、椋本断層(太田・寒川、1984)、風早池断層(八木・寒川、1980)などの活断層が断続的に分布する。一志断層とこれらの活断層に挟まれる地域の新第三系には、地層の急傾斜や逆転が認められる。また、久居市森町では、一志断層の西側にNE−SW走向の活断層である庄田断層(八木・寒川、1980)が認められる。一方、安濃町安部の西方で東西方向に分布する船山断層(吉田ほか、1995)は中新統を切る地質断層とされている。

地表地質踏査結果と既存文献に基づき、地質図、地質断面図及び走向線図を作成した。これらの結果から、本調査地域の地質構造は以下のようにまとめられる。

@ 一志断層近傍に分布する新第三系は、断層に平行な走向で東へ60゜以上の急傾斜(一部は逆転層)を示す。

A 一志断層に平行する前縁断層の東側に分布する新第三系は傾斜が緩い(20゜以下)。

B 鈴鹿層群中には関町鷲山の北西から芸濃町忍田の二重池北西まで、一志断層に平行して南北約7kmにわたる萩原背斜(鈴木ほか、1948)が認められる。この背斜は東翼が急傾斜、西翼が緩傾斜の非対称構造である。

C 庄田断層は一志層群を7〜9m垂直方向に変位させているが、地層の撓曲は認められない。

D 船山断層を境界として、一志層群の構造が変化する。断層以北では南北走向、東へ傾斜し、断層以南では東西走向で緩傾斜となる。