3−4−4 まとめと今後の課題

今回調査したを実施した鈴鹿東縁断層帯について、トレンチ調査から、約2万年〜3万年前に形成された低位段丘面の構成層を切る低角逆断層が確認され、少なくともこの年代まで断層活動が継続していたことが認められた(太田・寒川,1984が追認された)。

最新の活動時期は、放射性炭素年代から、概ね11世紀初めから15世紀初めの平安中期から室町時代初期であることが推定された。また、トレンチ調査での複数イベントの確認はできなかったものの、鉛直変位量を利用して求めた地震の発生間隔は、地震活動が繰り返し一定間隔で起こるという前提で求めた場合、約4,000年〜6,000年と推定された。さらに、鉛直変位量の平均変位速度の分布から、断層長約34kmと判明し、その断層の延長距離を考慮して統計的に求めた発生地震規模は、マグニチュード7程度であることが推定された。

しかしながら、この推定はあくまで鈴鹿東縁断層帯のうちの主に前縁断層系での調査結果をもとに推定しており、断層延長約34kmの全体にまんべんなくトレンチ等の直接的な方法を行った結果でないことに留意する必要がある。

今後は、トレンチ掘削などが物理的に不可能あるいは効果のない箇所での断層の確認方法や単位変位量の把握等が研究課題となろう。

今回の総合解析では、推定した活断層が起こす地震には固有性があり、それが厳密に守られるという仮定で考察しているが、実際のところ、地震の再来間隔や規模がどの程度分散するかはよく分かっていないのが現状である。また、一つ前の地震規模が小さかったとき、次の地震までの間隔は短くなるとされるタイム−プレディクタブルモデルの考え方も考慮しておく必要があろう。すなわち、今回の調査で判明した11世紀初めから15世紀初めの地震が断層の全域で破壊の起きた、十分な応力を解放した地震であったかどうかについて、さらに検討を加えていくことも忘れてはならない。

現時点で、当該地域でのM7程度の地震発生は切迫していないものと思われるが、それよりやや小規模の地震発生の可能性については予測が困難である。また、鈴鹿東縁断層帯が活動しなくても、近接する活断層が活動する可能性もあることから、活断層の周辺に居住している住民は十分に注意を払い、日頃から地震防災に心掛けていく必要がある。

今後は、自分たちの住んでいる地域の活断層の位置や地盤条件についてよく確認し、建物の安全性等について十分な配慮が必要である。そして、住民、地域、自治体、国や防災関係機関等が一体となって、それぞれの責任において地震対策を推進していき、地域の防災力を高めていくことが大切である。