2−5−2 調査仕様

(1) 作業手順

作業は、次のような手順によって行った。

・掘削用地の所有者立ち会いで掘削用地の境界を定めた。その場合トレンチ周辺の縮尺1/200平面図を作成し参考にした。

・草本等の支障物をとりのぞきトレンチを掘削した。掘削にあたっては、簡易測量でトレンチ掘削地点の中心線を決め、掘削形状を念頭に置いた外枠を設定して0.4m3バックフォーにて掘削した。壁面の掘削は、最初に角度を決め、それに沿って慎重に実行した。 

・トレンチ法面は、手作業で極力平滑に整形するように努めたが、礫質な堆積物については、状況にあわせて仕上げた。

・整形面に1mメッシュのグリットを設けた。   

・壁面スケッチを詳細に行い、最終的には現地で討論しながら解釈図を決定した。

・法面に出現した材化石や腐植土等の試料を採取した。細粒な火山灰質の堆積物や粘性土層も採取して、花粉分析や火山灰分析を行う予定であったが、分析に適用できる試料が非常に少ないか、もしくは採取できなかった。

・断層が確認できた箇所で施工性のよいトレンチでは、壁面のはぎ取りを実施した。

・平板測量を再度実施し、トレンチ位置・形状を記入した。

・ある期間一般公開し、地元住民の人たちなどに説明した。

・トレンチを埋め戻し、再度土地状況のチェック、とくに田等では、表層に岩片を残さないように細心の注意をはらい、地主立ち会いのもとに復旧した。

(2) 作業方法及び注意点

トレンチ作業の具体的な方法や注意点は、次のようである。

・トレンチ掘削にあたっては、掘削用地及び掘削残土置き場や作業ハウス、トイレ等の用地も設定した。

・掘削にあたっては、重機による掘削であるため、特に水田用地などでは、まず表土及び耕土だけを薄くはぎ取り、下位の土層・地層と混在しないようにした。

・トレンチの規模は、断層の出現状況にあわせて適時決定した。トレンチは、とくに断層の確認、断層の活動間隔を念頭において掘削したが、断層の確認ができた段階で、断層の活動間隔を読みとれるか検討し、状況判断から規模の大きいトレンチを掘削していない。

・掘削残土は、雨によって流出しないようにビニールシートをかけるなど十分な注意をはらった。

・排水は、トレンチ内からの出水だけでなく、外側からの流入を十分防ぐ努力をした。ただし、宇賀川地点では、地主との事前の連絡がうまくできていなく、表面の水路からのトレンチ内への流入があり、一時水没という事態に陥った。

・トレンチ法面は、最終的には人力による整形を行った。礫質な堆積物の場合、礫の状態を見ながら慎重に作業を行った。

・観察にあたっては、1mメッシュにグリットを設けた。グリットの設定にあたっては、まず、トレンチ周辺の横板と杭で柵を作り、次に板の水平距離1mごとに釘をうち黄色のガムテープを貼った。さらに5mごとには赤のガムテープを張り付けた。その後トレンチ法面上にレベルで基準となる水平線を決め、回りに横板の1mごとの釘から水平線と直交するように水糸をたらし、法面下部と固定した。これによって1mごとのグリットが完成する。

(3) トレンチ法面の観察

トレンチ壁面観察は、先に挙げたトレンチ調査の目的を達成するために、掘削、整形したすべての面(原則として、進入路面と掘削底面を除く3面)を対象として実施した。スケッチ範囲も原則として同様の範囲とした。観察及びスケッチを実施するに当たっては、以下の点を留意した。

・スケッチの縮尺は1/20とする。

・観察は肉眼で識別でき、かつ、上記縮尺で表記可能な精度で地質を区分する。

・区分した単層は、層相、変形構造、堆積構造、地層境界の性状、層位関係、断層及び亀裂の分布、動植物遺体、液状化跡、考古遺物等について詳細に記載する。

・単層間の不整合、単層と断層との関係(切られた、覆われた)、層準による変形の違い等を総合的に判断して、断層活動が生じた層を認定し(イベント層の認定)、その層をスケッチに表記する。