(2)地質精査

1) 青川地域(員弁郡北勢町〜大安町)

青川地域の地質図を図2−2−3−4に示す。地表踏査の結果は、以下のように要約される。

・本調査地域は、西側で比高150〜250mを頂部とする丘陵地が分布し、その丘陵地の東側には、青川や員弁川によって形成された段丘面(M2面、L1面)が広く分布する。また、北勢町奥村北方には、青川の旧河道が分布する。

・丘陵地を構成する地質は、西側下位より、東海層群古野累層、多志田川累層、大泉累層、米野累層が整合で分布する。

・古野累層は、本調査範囲西側の、興和工業作業所裏の尾根部や源太川上流部等で確認された。地質は、主として、砂層、シルト層、細礫層が互層して分布し、NNE方向の走向で東に30〜40゜で東に傾斜する。

・多志田川累層は、青川右岸で断片的に分布するほか、源太川中〜上流域でほぼ連続して分布する。地質は、礫層とシルト層の互層を主体とし、NNE〜NNW方向の走向を示し、東側へ30〜40゜で傾斜する。なお、上位でシルト層の方が卓越する。

・大泉累層は、青川右岸の興和工業採土場で広く分布する。地質は、シルト層、砂層、細礫層からなり、本層の下位はシルト層卓越、上位は砂層、礫層卓越となる。NNE〜NW方向の走向を示し、東側に40〜70゜で傾斜する。

・米野累層は、丘陵地の前縁部、国道306号沿い等に点々と露頭が分布する。地質は、赤褐色〜褐色の礫層、シルト層からなり、前縁断層系近傍で、N方向の走向で30゜程度東側に傾斜する。また、前縁断層系に平行する高角の逆断層(石榑北山断層)付近では、地層の傾斜が70〜90゜の傾斜を示す。

前縁断層系の変位地形は、青川左岸の中位段丘面(M2面)上で、比高5mの崖を形成している。このほか、北勢町麓村の三岐鉄道線路沿いに不明瞭ながら二条の低崖地形(比高2m以下)が認められた。一方、低位段丘面上の変位地形は、耕地改善による地形改変が行われており、現地踏査からは判別できなかった。

東郷・岡田(1989)によれば、本精査範囲の大安町丹生川北と同町石榑北山で前縁断層系の断層露頭を記載している。このうち、石榑北山の断層露頭は、河川改修及び植生により確認できなかった。現地踏査では、丹生川北の露出(文献中の断層露頭A)のみを確認した。観察の結果、この露出を構成する地層を、T面構成層(高位段丘堆積物)としているが、地表地質踏査の結果から、この地層が、岩相上の類似から、東海層群米野累層に対比されると判断した。

図2−2−3−4 地質図(青川地域)

2) 宇賀川地域(員弁郡大安町〜三重郡菰野町)

宇賀川地域の地質図を図2−2−3−5に示す。地表踏査の結果は、以下のように要約される。

・本調査地域には、宇賀川の段丘面(M2面及びL1面)が広く分布する。丘陵地は、宇賀川右岸側に分布するほか、北部の石榑北山付近にも、比高150〜250m程度の丘陵が分布する。

・露出で確認された地質は、西側下位より、東海層群美麓累層、石榑累層、多志田川累層が分布する。

・美麓累層は、宇賀川中流のフィッシングセンター付近に下位の中生代の地層を不整合に覆って分布する。シルト質細砂〜シルトを基質とした同質の角礫を多く含む層相を示す。層厚は、見かけ10m程度で薄く、分布は局所的であると推定される。

・石榑累層は、石榑北山の西方に分布する。礫層を主体とした層相で、構造は明瞭でないが、比較的低角度で南側に開いた構造を示す。

・多志田川累層は、石榑北山付近、宇賀川の浸食崖及び宇賀川右岸の丘陵を構成する地層でシルト、礫層が主体をなす。石榑北山付近の地質構造は、青川地域の地質構造と同様、N〜NE方向の走向を示し、東に40〜70゜で傾斜する。一方、宇賀川付近及び、宇賀川右岸側の丘陵地は、全体に低角度の構造を示す。傾斜方向も東西に向き一定の方向を示さない。

・断層による変位地形は、石榑南集落内の照光寺付近には、比高約5m程度の急崖が中位面(M2面)上に認められる。その北方延長の低位面上では、その急崖は不明瞭となり、踏査での追跡は困難である。石榑北寺尾地内から石榑南大門地内にかけて不明瞭な低崖地形が認められる。宇賀川右岸では、宇賀溜付近に二条の低崖地形が中位段丘面(M2面)上に認められる。

・宇賀川の浸食崖に出現する東海層群の傾斜について着目すると、前縁断層系に近接するにつれ地層の傾斜が大きくなる傾向が認められた。また、トレンチ掘削地点付近では、撓曲軸方向の小断層が分布していることが確認された。

・本調査範囲で明瞭な断層露頭は認められなかった。

図2−2−3−5 地質図(宇賀川地域)

3) 田光地域(三重郡菰野町)

田光地域の地質図を図2−2−3−6に示す。地表踏査の結果は、以下のように要約される。

・本調査地域は、東西に延びる比高80〜200mを頂部とする丘陵地が東西方向に分布し、その丘陵地に挟まれて、東に流下する田光川が流下する。また、田光川に沿って低位段丘面(L1面)が広く分布する。

・丘陵地を構成する地質は、大泉累層の砂層、シルト層が主体をなし、丘陵東縁部に米野累層が局所的に分布する。大泉累層は、前縁断層系付近では、高角度(一部逆転する)の構造を示すが、一般には中角度の構造を示す。また、走向も南北方向から東西方向に変わっている。米野累層は、菰野町杉谷地内の丘陵先端部の崖に露出しているのみである。

・変位地形と考えられる低崖地形は、田光地区南〜西方の段丘面上に四条平行に分布しているのが認められた。これらのうち、一番東側に分布している低崖地形は一部不明瞭であるものの、南の杉谷地区までほぼ連続して分布する。

・田光地区金比羅神社北方の土砂採土場には、大泉累層の撓曲構造がほぼ連続して観察される。特に、前縁断層系が通過すると推定される丘陵東縁部は、地層の逆転が観察される。

・本調査範囲で明瞭な断層露頭は認められなかった。

図2−2−3−6 地質図(田光地域)

4) 湯の山地域(三重郡菰野町)

湯の山地域の地質図を図2−2−3−7に示す。地表踏査の結果は、以下のように要約される。

・本調査地域は、三滝川を境に北側と南側で若干異なる。北側には、大きく2段に区分される段丘面(M2面、L1面)が広く広がっている。一方、南側には、比高150〜250m程の扇状地性の段丘堆積物が、中・古生層、東海層群の地層を覆っている。

・本調査範囲に分布する東海層群は、湯の山礫相(東方で桜村累層に移化)が分布する。また、境界断層を挟んで西側には、中生代の砕屑岩類が分布する。東海層群の構造は、概ね10゜以下で東側に傾斜しているが、境界断層近傍では、40゜前後と中角度の構造を示す。

・断層露頭は、近鉄湯の山温泉駅西方の三滝川右岸側に、中生層の砕屑岩と湯の山礫相が西傾斜の逆断層で接しているのが認められた。しかし、基盤を覆う未固結層に変形を与えているかは不明である。

・変位地形と考えられる低崖地形は、三滝川の左岸に分布する中位及び低位段丘面上に分布する。湯の山温泉の南方にも、不明瞭な低崖地形が認められる。これらの低崖地形は、三滝川右岸に分布する断層露頭を挟んでほぼ直線的に並んでおり、一連の活断層である可能性が高い。

5) 水沢地域(四日市市〜鈴鹿市)

水沢地域の地質図を図2−2−3−8に示す。地表踏査の結果は、以下のように要約される。

・本調査地域は、内部川の扇状地面が広く基盤を覆っている。また、内部川左岸の山麓には開析の進んでいない扇状地(水沢扇状地)が分布する。したがって、中生代砕屑岩類及び東海層群の堆積岩類が露出しているところは限られており、特に東海層群の堆積構造や、中生代の砕屑岩と東海層群の関係を示す露出は認められなかった。

・限られた東海層群の露出(たとえば、水沢病院裏の露出)から推定される堆積構造は、北東側に緩く(10゜以下)傾斜していると推定される。

・変位地形と推定される低崖地形は、水沢扇状地内に二条、鈴鹿市大久保付近で一条推定された。いずれも同一段丘面上の低崖地形と考えられるが、比高差が1.5m以下で非常に不明瞭であること、扇状地性の段丘面であるため、堆積ユニットの境界の可能性があること、改変地形であることも考えられ、低断層崖としては、やや不明瞭である。

・本調査範囲で、活断層を示唆するような露出は認められなかった。

なお、各地質図に対応する断面図を一括して図2−2−3−9に示した。

図2−2−3−7 地質図(湯の山地域)

図2−2−3−8 地質図(水沢地域)

図2−2−3−9 地質断面図