6−2−2 トレンチ法面の地質

トレンチ法面のスケッチ図を図6−2に,地層区分図を図6−3示す.本トレンチ法面に見られる地層は,大まかには5層に区分できる.その地質層序を表6−7に示す.

トレンチ法面でみられる地層の形成年代

本トレンチが掘削された地形面と構成地層の形成年代について考察する.

伏島・平川(1996)によれば,トレンチ調査地点の地形面はT3面にあたり,最終氷期前半に離水したと推定されている.本トレンチでみられた第3層のうち,3−1層および3−4層は花粉試料(S47−3・S47−4・S47−8)に冷温帯広葉樹を全く含まず,草本類も極めてわずかであることから,冷涼期〜寒冷期の堆積物であると考えられる.このうち,S47−8にはグイマツが含まれるので,3−1層は北海道のグイマツが絶滅した完新世の8,000年前(五十嵐,1996)以前の堆積物であると考えられる.また,3−3層(P−3)で採取した腐植質土について放射性炭素年代測定を実施したが,その14C年代は29,350±180yBPである.これらのデータから,T3面の離水時期は最終氷期前半と考えられる.トレンチ地点付近のT5面堆積物(採取地点は図5−1参照)から採取した試料RYU−03(腐植質シルト)からは,980±60yBPの14C年代が得られている.

第5層(腐植土層)は,本層中の試料S47−1から産出した化石花粉群が現在の調査地点周辺の植生を反映していることから,現在の堆積物であると考えられる.従って,腐植土層は,段丘面の形成後に表層を覆ったと推定される.

トレンチ部の堆積物の構成

トレンチで確認された地層は,下位から第1層(礫支持礫層),第2層(基質支持礫層),第3層(砂質シルト),第4層(灰色シルト)および第5層(腐植土)である.第1層〜第3層間の関係は,後述のソリフラクションにより乱された部分があるものの,整合関係である.従って,トレンチ部で段丘堆積物を構成する地層は第1層〜第3層であり,この段丘堆積物を覆うT3面より新期の堆積物は,表層を覆う腐植土層と第4層以外は確認されなかった.段丘を構成する地層は大局的にみると,下位から礫支持礫層→基質支持礫層(一部砂層を含む)→砂質シルトと上位に向かうにしたがって細粒化している.