5−2 浦臼地区

地形

本地区は浦臼町札的内にあり,完新世のT6面から成る札的内川の谷底部に位置する.本地区の掘削候補地点より上流側の両岸は小起伏の山地であり,下流側には河成段丘面が広がる.段丘面は,高位のT2面および低位のT3面に区分される.この山地と段丘面の境界は,北東−南西方向に連続する三角末端面となっている.

段丘面には,北東−南西方向の断層崖(大部分は撓曲崖)が認められる.この崖は北東のT3面から続き,T6面ではやや山側に入り込み,さらに南西のT3面で再び低地側へずれることから,低角の逆断層による崖である可能性が大きい.なお,この崖の下流700m付近にも,不明瞭ながらこれに平行なリニアメントが見られる.

地質・地質構造

調査地域の地質は,図5−3に示すように,下位より@鮮新統当別層,A鮮新統厚軽臼内層下部層,B下部更新統厚軽臼内層上部層(仮称),CT2面堆積物・T3面堆積物,およびDT6面堆積物に区分される.なお,現河川沿いの一部には河川改修の際,埋め立てられた埋立土層が分布する.鮮新〜下部更新統は大局的に同斜状の構造をとり,山地側から低地側に順次上位層が分布する.

@当別層は層理の不明瞭な青灰色細粒砂岩から成り,一部凝灰質砂岩の薄層を挟む.札的貯水池より上流に分布し,その走向は概ね北北東−南南西で,30゜程度東に傾斜している.

A厚軽臼内層下部層は斜交成層の著しい凝灰質砂岩から成り,礫質砂岩・軽石質砂岩を伴う.下位の当別層とは整合と考えられている.本層は,上流の札的貯水池付近では概ね北北東−南南西の走向をもち,20〜30゜程度東に傾斜している.しかし,これより下流の土砂採取場付近(候補地点より400m上流)では,ほぼ水平(傾斜0〜8゜)である.

B厚軽臼内層上部層は河川成の礫岩を主体とし,細粒砂岩・シルト岩を挟む.下位の厚軽臼内層下部層を不整合に覆い,層厚は150m以上と推定される.上述の土砂採取場付近ではほぼ水平であるが,候補地点の下流左岸の山地にある射撃場法面,三角末端面の道路法面,およびその下の水田沿いの崖では30゜から75゜と急激に東側に傾斜する.水田沿いの崖では,これを切る北西に20゜程度傾斜する小断層が多数観察できる.これらは,この地層の撓み(flexure)に伴う小断層と判断される.

CT2面堆積物・T3面堆積物については,露頭が少なく詳細は不明である.T3面堆積物の上部2〜2.5mは,厚さ数10cmの灰色〜黄褐色シルトとシルト基質角礫層の互層から成り,しばしばインボリューションによると見られる波状の変形をしている.確認した限りでは,この互層下の礫層は,厚さ1m以上で径数cmの亜角礫が多い.

DT6面堆積物はシルト・砂礫から成る.礫の径は数cm程度のものが多く,大きな礫は少ない.ボーリング地点での堆積物の厚さは4mである.

トレンチ地点の評価

地形地質踏査,反射法地震探査(浅部は極浅層反射法),およびボーリング調査などの結果を参考にして地下構造を推定し,図5−4に示した.撓曲崖は,地表に分布する緩傾斜の鮮新〜更新統が反射法断面でみられたF1断層に沿って撓曲構造をなす部分に相当する.反射断面をみると,この下流側のF2断層の変位量がより大きいようにみえるが,地形的に不明瞭であることから,最新の活動の変位量はF1断層で大きいと判断した.従って,断層がT6面堆積物を変形させているとすると,反射法の測点500〜550m区間でその現象が見られるはずである.なお,鮮新〜更新統の変形との関係を把握するため,当初は両岸の山際を候補に考えたが,農業用水路と河川がある上,重機の搬入も難しいことから中央部の水田を掘削地点とした.