4−5−3 浦臼地区(浦臼町札的内)

空中写真判読によれば,本地区で北東−南西の走向をもつ撓曲崖が認められており,札的内川に沿っては完新世(T6)面を,その北東側と南西側の台地ではT3面を南東方向に撓曲させている.図4−14に示した札的内川沿いの本地区の地形プロファイルでは,反射法測点500m付近を中心とした撓み下がりが認められる.

本地区の地質は,上位から第四紀の扇状地堆積物・段丘堆積物,前期更新世〜新第三紀鮮新世の厚軽臼内層・当別層,新第三紀中新世の新十津川層群・西徳富層群,および古第三紀の樺戸層から成る.ただし,北東約5kmおよび北北東約5km地点にある温泉試掘井の資料(活断層図参照)などによれば,新第三系鮮新統の下面深度は標高−405〜−463mに,先新第三系到達深度は標高−405〜−533mにあると推定される.即ち,中新統は薄いと推定される.重力プロファイル調査

重力プロファイル調査によれば,測線の西端部では1mgal以上のかなり大きな短波長の異常がみられる(図4−2).この異常は,中新統や古第三系に発達する古い地質構造の異常を反映したものであり,おそらく活断層による新しい異常を反映したものではないと考えられる.

反射法測点500mから北西側250mの範囲で,僅かな低重力異常が認められる(図4−14).ただし,異常値は0.3mgal程度と小さく,地下構造の異常としてはそれ程大規模なものではないと考えられる.

IP法比抵抗映像法

IP法比抵抗映像法の結果によれば,測線420〜530mにかけて浅部には,400〜1000Ωmの高比抵抗値を示す地層が8m程度の厚さで分布するが,測線500m付近から東側ではその厚さがやや薄くなる.また,測線530mより東側で浅層の比抵抗値は100〜200Ωm程度に減少する.

充電率の測定結果では,顕著な高異常が450〜460m付近の狭い範囲にみられる.その東側の浅部では,中程度の充電率を示す層が成層している.測線500mの直下の深い部分には,測線中で最も低い2mV/V以下の充電率をもつ層が極めて狭い範囲に分布し,この部分を挟む幅40mの範囲では4mV/V以下の低充電率部をなす.

このように,測線500m付近の浅部の地層は高比抵抗値・中充電率部を形成しており,地層の破砕状態や断層粘土の存在を示唆する著しい低比抵抗値・高充電率部の形成という結果は得られなかった.この結果からみると,浅部の地層が断層運動によって顕著に乱されている可能性は小さいと考えられる.ただし,小規模なそれらの存在を否定したものではない.

反射法地震探査

本地区の最浅部には,段丘堆積物が分布する.厚さは数m〜10mであり,西半部ではほぼ一定で薄いが,東半部ではやや厚くなる.

測線の東半部に見られる東下がりの不明瞭な反射面は,厚軽臼内層上部層の内部の境界面に相当すると考えられ,東側に向かって本層は厚くなっている.この下位には,部分的に切れるものの,測線全体にわたって連続性の良い明瞭な反射面が2〜3枚見られる.これらは厚軽臼内層下部層の内部の反射面と考えられる.そのうち最も上位の反射面の深さは,西端から測線450m付近まで約50mと一定で,測線500m付近で局所的に深くなる.そして,測線600m付近で一旦浅くなるが,それ以東でかなり急激に深くなり,東端で130m程度となる.厚軽臼内層下部層の内部では,上部で比較的連続性の良い反射面がみられるものの,下部では連続性の良い反射面が欠落している.その下位にあって,西端で約210m,そして東に向かって徐々に深度を増して東端では300mを越える反射面は,当別層の上面に対応すると考えられる.本層の内部には連続性のよい多数の反射面がみられ,成層性が高いと考えられる.

さらに下位には,測線の西端で深度530m程度,東端では500m付近にあって,やや起伏はあるものの全体的にほぼ水平で,かつ明瞭な反射面がみられる.この反射面は固結度の高い中新統(晩生内層・札的沢層)の上面に対応すると考えられる.これよりも深い部分では,1000m程度まで明瞭な反射面が何枚もみられるが,かなり大きな角度で西傾斜するものが多く,古第三系の境界面に対応するものと考えられる.

測点500mの西側と東側には,反射面の連続性を切断するいくつかの断層がみられる.そのうち,顕著なものは図4−13に示した西傾斜のF1とF2である.F1は,測線200m付近の深度約230mで厚軽臼内層下部層と当別層の境界面を低角で切る断層で,浅くなるに従って次第に高角になる.F1の上盤側には,これに伴う副次的な断層による変形構造がいくつかみられる.それらの例としては,図4−13に示したF1から派生して測点300m付近の深度50mで浅部の反射面を切るものと,測点350m付近で深度100m近くの反射面を切るものが挙げられる.これは,F1断層の活動に伴う上盤側の変形形態とみることができる.ここで言及した測点300〜500mの範囲は,前述した重力プロファイル調査でブーゲ異常値が僅かに低異常( 0.3mgal程度)を示した区間に一致する.これは,断層運動によって密度の違う地層が接していることによるもの,あるいは破砕された低密度層が厚く堆積することによる密度異常が反映されていると考えることができる.

F2は,測線650m付近で地表近くに達する高角度で西傾斜の形態を取る.F2以東では鮮新統の反射面は東傾斜を示し,その上位にある厚軽臼内層上部層が急激に厚さを増す.F2以西では,鮮新統の内部に西傾斜の反射面が現われ始める.

極浅層反射法

本地区では,最も浅い部分の反射面構造をみるために,バイブレータ震源を使用した高周波P波極浅層反射法を実施した. 測定の諸元は以下のとおりである.

・測線配置:浅層反射法測線の357m〜605m間

・観測パターン:終端発振,起震点間隔 2m,起震点数110点,受震点間隔 2m,受震点数48ch,起震点−受震点間隔は最小2m・最大96m

・起震装置:ポータブル・ミニバイブレータ,Linear up Sweep 50−400 Hz,起震時間 2sec,スタック4回

・受震装置:上下動地震計,固有周期100Hz,シングル

・観測装置:デイジタル地震探鉱器DAS−1(OYO Geospace社)

・データ処理方法:重錘落下方式による浅層反射法の場合とほぼ同様(4.2節参照).

図4−16に示した重合深度断面では,深度10〜50mまでの反射面が極めて明瞭に把握されている.この断面図によれば,測線の400m付近と500m付近に反射面の不連続が認められる.そのうち,測点400mでは反射面の不連続線はほぼ垂直である.また,測点500m・深度20m付近に見られる明瞭な反射面は切っていないが,この付近より西側の各反射面の不連続部分を連ねると,ほぼ45°の西傾斜で,西側が東側にずれ上がるタイプの逆断層が想定される.このような形態からみると,両者は浅層反射法の結果でみとめられたF1断層の活動によって,その上盤側に生じた副次的な変形が地表近傍にまで到達したものとも考えられる.

これまで述べてきたように,極浅層反射法とIP比抵抗映像法によって得られた浅部構造の関係は複雑である.例えば,測点520m付近の反射面の不連続を境として,西側では表層に400Ωm以上の高比抵抗帯,その東側では100〜200Ωmのやや低い比抵抗帯となっている.これは測点520m付近を境に沖積層(T6面堆積物)の堆積状況が変化していることを示唆する.

ボーリング調査

掘削地点は反射法測点445mの1箇所,掘削深度は44.86mである.本地区では,特に地表下30〜45mのやや深い部分の地質構成の把握を主目的とした.このため,29.87mまでの浅部の掘削には,主にトリコーンビットを使用した.この間,前後6回にわたりコアサンプリングも試みたが,採取率は悪かった.このため,掘削時の感触,カッテングスの特徴,および比抵抗検層のパターンにより地質の判断を行なった.29.87m以深ではコアを採取し,調査結果を地質柱状図として図4−16に示した.

地表下4.0mまでの細〜中礫混り粘土質砂および粘土混り砂礫は,沖積層(T6面堆積物)に対応すると考えられる.

この下位には鮮新世の厚軽臼内層上部層と同下部層が分布する.深度4.0〜27.20mは,厚軽臼内層上部層に対応すると考えられる.このうち,深度4.0〜14.13mは礫岩と砂岩から成る.掘削時のショックの状況や比抵抗検層から,上方細粒化の堆積パターンが認められ,岩相の変化は穏やかである.深度14.13〜27.20mは主に礫岩から成り,青灰色〜緑灰色の亜炭混り粘土や茶褐色の細〜中粒砂を挟む.岩層変化の境界は,かなり明瞭である.

深度27.20〜44.86mは,典型的な厚軽臼内層下部層の岩相を示し,上方に向かって凝灰質粗粒〜極粗粒砂岩から凝灰質シルト岩〜軽石質中粒砂岩へと変化する.