4−2 IP比抵抗映像法電気探査

ここでは,20m以浅の地層の堆積状態を把握するために,2次元の比抵抗断面と充電率断面を同時に得られるIP比抵抗映像法を採用した.

方法の概要

この方法は,比抵抗映像法とIP(誘導分極Induced Polarization)法を組み合わせたものである.即ち,まず交代直流信号を通電した際に発生する一次電位を計測して,地層の比抵抗値を求める.次に,電流を切断した際に発生する二次電位の過渡現象波形を記録・計測し,地層の充電率を求める(島ほか,1995).

このうちIP法は,大地の電気的な分極効果を利用する方法であり,主に鉱床探査に用いられてきた.金属鉱物を含む岩石に電流を流すと,鉱物の表面と周囲の間隙水との間に電位差(一次電位)を発生して電荷が蓄えられる.次に,加えた電流を切ると蓄えられた電荷は徐々に放出され,それに伴って電流が流れて二次電位を生じる.充電率は,計測された二次電位の変化の観測時間に関する積分値を,観測時間と一次電位の積で除すことによって得られ(図4−3),その単位はmV/Vである.充電率の値は,地層のIP効果(電荷を蓄える能力や放電に要する時間の違い)を反映して変化するが,一般に金属鉱体が伏在する時には顕著な変化を示し,粘土鉱物の場合も高い値を示す.従って土木工学の分野では,例えば粘土化した岩石を含む断層破砕帯の位置の推定に有効であるとされている.

測線の位置および長さ

測定は,雨竜地区(雨竜町豊里),新十津川地区(新十津川町大和),および浦臼地区(浦臼町札的内)の3地区で実施した.測線は後述する反射法地震探査の測線の上に重ねて設定し,測線の長さはそれぞれ200mとした.測線の中心点は,地震探査測線上では雨竜地区で350m,新十津川地区で400m,浦臼地区で500m地点にあり,各撓曲帯の中心部とほぼ一致する.

測定仕様・諸元

IP比抵抗映像法で測定する二次電位は,通常の比抵抗法探査で測定される一次電位に比較すると著しく小さい.このためノイズの影響を受けやすいので,測定電極の配置としては,電磁カップリングの影響をあまり受けないポール・ダイポール法を用いた.この方法では電流電極のうち一方の極を遠方電極とし,他方の電流電極と電位ダイポール電極との距離で探査深度が決まる.電流送信器としては,観測される電位を大きくするために1〜4アンペアの大電流を流す能力をもつ装置を用いた.また,IP受信器としては,1μV程度の電圧分解能が必要である.以下に,IP比抵抗映像法の測定諸元を示す.

・測線長:200m × 3測線

・単位電極間隔:2m

・電極配置:比抵抗法/ポール・ポール,IP法/ポール・ダイポール

・探査深度:20m

・電流送信器:IRIS社VIP−3000,最大出力電圧3kV,出力電力3kW

・通電時間:0.25〜8 sec

・IP受信器:IRIS社ELEC−6,最大入力電圧8V,入力インピーダンス10MΩ,サンプリングレ−ト10msec,自動SP補償,電圧分解能1μV,充電率分解能0.1mV/V

解析方法

測定された見掛擬似断面図は,地層の見掛比抵抗値と見掛充電率の分布を示したものである.真の比抵抗値と充電率を求めるためには,逆解析を行なう必要がある.逆解析では,まず探査領域を適当なブロックに分割し,それぞれのブロックに初期モデルとして適当な比抵抗値と充電率を与える.次に,この初期モデルについて理論的な見掛比抵抗値と見掛充電率を計算する.さらに,計算された理論値と実測値を比較して,その残差が小さくなるように非線形最小二乗法を用いてモデルを修正する.この理論計算とモデルの修正を繰り返し行なって,残差が充分小さくなれば解析を終了する.最終的に得られたモデルが,真の比抵抗値と充電率の分布を表現していると考える.