4−1−2 重力プロファイル調査

地震探査や電気探査を実施するにあたっては,本断層帯の走向方向を横断するように測線を配置しなければならない.この際,全長約47kmの長いリニアメント,あるいは断層帯のどこに物理探査の測線を設定するかが,大きな問題である.

そこで,できるだけ新しい地形面に認められたリニアメント上において,断層活動を反映したとみられる異常な地下構造が伏在している可能性の高い地点を選定するために,比較的簡便な方法として重力プロファイル調査を実施した.測定は応用地質株式会社によって行なわれた.

この方法は,測定された重力値に種々の補正を施して得られるブーゲ異常値の場所による変化が,密度異常を反映した地質構造の不均質性を示す性質を利用している.測線は,活断層図でGと示した北竜地区,雨竜地区,新十津川地区,および浦臼地区の4測線である.測定はほぼ直線的な道路上で,概ね50mおきに実施した.使用した重力計は,SCINTREX社のCG−3Mである.測定値に対しては,器械高,ドリフト,および地球潮汐などの補正のほか,フリーエア補正を行なった.その後,密度を1.7gr/cm3と仮定してブーゲ補正を施し,さらに標準重力値を差し引くことにより単純ブーゲ異常値(単位はmgal)を計算した(萩原,1978).ここでは,ほぼ平坦な地形上に設定された短い測線であること,および概査であることを考慮して地形補正は施さなかった.4測線の単純ブーゲ異常値のプロファイルを図4−2にまとめて示した.図中に示したzero地点は,空中写真判読で認定されたそれぞれの撓曲帯のほぼ中心部に一致している.

これらの重力プロファイル図には,4地区とも西側から東側に向かって,徐々にブーゲ異常値が減少してゆく大きな傾向が見られる.これは,山地から砂川低地帯側に向かって,低密度の新期堆積物の厚さが増加してゆくことを示している.このような大局的なトレンドに重なってやや短波長の異常値がみられる.例えば,浦臼地区ではzero地点のやや山側と+1000m付近に,低異常が認められる.このうちzero地点付近,即ち撓曲帯の中心部付近にみられた低異常は,新十津川町大和地区と雨竜町豊里地区においても認められる.特に,雨竜町豊里地区では,短い距離の間で約1mgalの明瞭な低異常がみられ,4地区の中では最も顕著である.これに対して,北竜町和地区では僅かに異常は認められるものの,他の3地区と比較するとその程度は小さい.

これらの低異常は,定性的には断層運動によって破壊された地下浅部における堆積物の乱れを反映したモデルで説明できる.即ち,断層運動によって地層が破砕されたり,断層崖付近につくられた凹地に低密度の物質が堆積した場合には,上記のような低異常が生じる.また,衝上した上盤側の地層が,破砕された状態でプリズム層として断層の下盤側に堆積した場合も,低異常が期待される.従って,重力異常値が周辺よりも低い部分には,周囲よりも低密度の地層が地表下浅部に存在していると考えられ,そこには断層の伏在が想定される.

以上の結果から,重力プロファイル調査を実施した4地区のうち,北竜町和地区を除く3地区で認められた低異常は,地形学的観点をも考慮すれば,断層運動の結果生じた異常な地下構造を反映している可能性が大きい.従って,雨竜町豊里地区,新十津川町大和地区,および浦臼町札的内地区の3地区に絞って,次の段階の物理探査として電気探査と反射法地震探査を実施することとした.