3−2 地形面の区分・対比・分布

調査にあたって,まず空中写真判読によって段丘地形面の区分・対比を行ない,これまでに行なわれた研究結果を参考にしながら各面の分布範囲を明らかにした.地形判読には,米軍撮影の縮尺1:10,000,1:40,000空中写真,および国土地理院撮影の縮尺1:20,000空中写真を併用した.

本地域の段丘面の分布は,これまでに平野(1980),山本(1987),および活断層研究会(1991)によって示されている.このうち山本(1987)の段丘面区分は,本地域の北部を対象としているが,14C年代値の測定を行なっており,対比の精度が高い.従って,山本(1987)の区分と重なる範囲ではそれと対比を行ない,また放射性炭素年代値を参考にした.

増毛山地東縁では,下位からT6〜T1の6つの河成面が区分できる(活断層図参照).従来の研究による編年結果との対比を表3−1および表3−2に示す.

T6面

T6面は,現河川に近い位置に存在する最下位の段丘面である.低地面との比高は,10m未満である.この段丘面は,山本(1987)のV面に相当し,完新世の後半に離水した段丘であると推定される.この面の堆積物からは後述のように,雨竜地区で約1,000年前,浦臼地区で2,400〜300年前の14C年代値が得られている.

T5面

T5面は下位から2番目の段丘である.T6面との比高は5m未満で,浦臼町於札内以北の,石狩川・雨竜川とそれらの支流との合流点付近に広く分布している.この段丘面は,山本(1987)のW面に相当する.山本(1987)は埋没土壌の14C年代値5,910±60yBPをもとに,W面の離水を完新世の前半としている.

T4面

T4面は下位から3番目の段丘である.この段丘面は月形町札比内より北では石狩川の支流に沿って分布しており,本流に沿っては分布が悪い.しかし,札比内より南では石狩川沿いに大規模な扇状地性のT4面が分布する.この段丘面は,山本(1987)のV面に相当する.山本(1987)は,埋没土壌の14C年代値21,100±600yBPをもとに,V面の離水を最終氷期の後半としている.

T3面

T3面は,恵岱別川右岸・総富地川右岸・浦臼付近に分布している.この段丘面は山本(1987)のU面に相当する.山本(1987)は,埋没土壌の14C年代値41,600±1,800yBPをもとに,U面の離水を最終氷期の前半としている.なお,本調査においても後述の雨竜トレンチの表層に近い3−3層の土壌から,29,350±180yBPの年代値が得られた.また,於札内川沿いのT3段丘堆積物(礫層)中の木片は,>50,000yBPの年代値を示した.

T2面

T2面は高位から2番目の段丘面である.この段丘面およびT3面と現河床との比高はほぼ等しく,両段丘面の間に明瞭な段丘崖が存在していることは稀であるため,それぞれを区別することは容易ではない.T2面の方がT3面よりも開析が進んでいること,面積が狭いこと,また相対的に河川から離れた位置に存在していることに注目し,両者を判別した.本面は総富地川から札比内にかけて広く分布し,平野(1980)のU面,活断層研究会(1991)の高位面に相当する.T2面は最終間氷期から最終氷期開始時期にかけて離水したと考えられるが,明確な根拠となるデータは得られなかった.

T1面

T1面は最高位の段丘面である.この段丘面は,於札内川付近に広く分布し,平野(1980)のT面,活断層研究会(1991)の最高位面に相当する.最終間氷期前半またはそれ以前に離水したと考えられる.