(4)試料採取および分析

堆積物の年代と古環境を明らかにする目的で両地区のトレンチ法面と近傍の露頭において,試料採取を行い,放射性炭素年代測定および花粉分析を実施した.図2−0−7(雨竜),図2−1−3(雨竜),および図2−2−3(浦臼)に試料採取位置を示す.また,表2−0−1に採取試料の一覧表を示す.なお,各トレンチ法面の堆積物中にテフラが分布しないため,テフラ分析は実施できなかった.以下に試料採取および分析方法をまとめる.

(1)試料採取

試料採取は,地層の地質観察・スケッチ・記載・写真撮影後,担当員の指示により実施した.放射性炭素年代測定試料については,木片,腐植質シルトおよびシルトを,花粉分析試料については,シルト,砂質シルトの細粒部を,塵等が混入しないよう採取した.

採取試料は,トレンチ名,採取位置,試料番号を記したビニール袋に収納した.なお,放射性炭素年代測定に供する試料については,あらかじめアルミ箔に包んだ後,ビニール袋に収納した.

採取試料数は以下の通りである.

・放射性炭素年代測定試料  雨竜地区 3試料

浦臼地区 15試料 計 18試料

・花粉試料         雨竜地区 12試料

浦臼地区 19試料 計 31試料

分析は上記の試料のなかから,放射性炭素年代測定 4試料,花粉分析 31試料について実施した.測定分析は,放射性炭素年代測定は,株式会社 地球科学研究所,花粉分析は,アース・サイエンス株式会社に依頼した.なお,一部の試料の分析については,北海道立地下資源調査所が別途依頼し実施した.

(2)放射性炭素年代測定

表2−0−2に測定方法などに関する条件を,図2−0−8に解析方法の概要を示す.

放射性炭素年代測定は,3試料をAMS(加速器質量分析器)法,1試料をβ線シンチレーションカウンタ法で行い,14C年代,炭素安定同位体比による補正14C年代,暦年代をそれぞれ算出した.

(3)花粉分析

花粉分析試料は,全試料採取地点とも貧化石層と見られたので,1試料について300gを分析処理した.

各試料は次の方法によって処理分析し,化石花粉を抽出した.

@ 試料を手で揉みほぐし,倍量の45%フッ化水素を加えよく攪拌した後,1昼夜ドラフト中におく.

A 遠心分離器によりフッ化水素を除去し,蒸留水で3回水洗いを行う.

B 試料に倍量の塩化亜鉛の飽和溶液(比重2)を加え,よく拡散したものを2000回転/分で1時間遠心分離する.

C 上澄み液を採取して3回水洗いを行う.

D 試料に酢酸を加え,10分間湯煎(80゚C)で加熱した後酢酸を除き,無水酢酸:硫酸の9 :1液を加えて反応させる(アセトリシス処理).

E 水洗いを3度行う.

F 上記の処理を行った後もガラス質の残差を含むため,フッ化水素処理を再度行う.

G 試料を蒸発皿にあけ,蒸留水を加え攪拌して10分おいた後,上澄み液を除去する操作を数回繰り返す.

試料中の水分を除いた後,グリセリンゼリーで封入し,プレパラートを作成した.検鏡は400倍と1000倍の光学顕微鏡で行い,木本花粉の総数が200個に達するまで同定し,その間に視野に現れるすべての草本花粉,シダ,コケの胞子を同定することを目的にした.産出率(%)は木本花粉については,木本花粉の総数を基数とし,草本花粉および胞子は花粉胞子の総数を基数として算定した.