1−3−2 平成7年度物理探査の結果

平成7年度には,広域重力探査,重力プロファイル調査,反射法地震探査(3測線,3km),およびIP比抵抗電気探査(3測線,600m)が実施されている.反射法地震探査,IP比抵抗電気探査,および重力プロファイル調査の結果は,平成7年度「樺戸断層の物理探査による地下構造調査委託」報告書(平成8年2月,応用地質株式会社)にまとめられている.

調査担当者

広域重力探査:岡崎紀俊・広田知保(北海道立地下資源調査所)

反射法地震探査・IP比抵抗電気探査,重力プロファイル調査:応用地質株式会社

まず,大きな地質構造の傾向をみるために実施した広域重力探査の結果について述べる.その結果は,この周辺で既に温泉探査などで実施されている重力測定の値を含めて,図3−2−1にブーゲー異常図として示されている.この図によれば,樺戸山地の東縁に沿って重力異常のコンターが極めて混んでおり,大きな地質構造の変換線になっていることが明らかである.これは,第三紀中新世以降のユーラシアプレートと北米プレートの相対的な運動を反映した構造であり,樺戸地塊が中央北海道に衝突したため地塊北方の新第三系が変形して,北西−南東の方向の褶曲群を形成したものである.このような構造運動は第四紀後半〜現在も継続しており,その運動が樺戸山地東麓の活断層群に大きな影響を与えていると考えられる.

次に,空中写真で判読されたリニアメントの上にあって,断層系の活動を反映したとみられる異常な地下構造が存在している地点を明らかにするために,簡便な方法として重力プロファイル調査を実施した.測線は,前節の図3−1−2に示した北竜町和地区,雨竜町豊里地区,新十津川町大和地区,および浦臼町札的内地区の4測線である.4地区のブーゲー異常のプロファイルをまとめて図3−2−2に示したが,図中のzero点は地形判読で認定されたリニアメントが通過する地点にあたる.重力プロファイルの値は,4地区とも西側の樺戸山地から東側の石狩川方向に徐々に小さくなってゆく.この大局的なトレンドに重なってやや小さな異常値がみられるが,これは局所的な密度構造の異常を反映したものである.これらのうち,北竜町和地区を除く3地区で認められた低異常は,地形学的観点をも考慮すれば,断層運動の結果生じた異常な地下構造を反映している可能性が大きい.

前項で述べた地形判読・現地地形地質調査および上述の重力調査の結果などから,活断層研究会(1991)が指摘した和断層の一部や,樺戸断層セグメントb(花月)のリニアメントの確実度はUないしV以下であること,またこれらの断層は第三系の非対称背斜の東翼部に形成されていることが明らかになった.

以上の結果から,雨竜町豊里地区,新十津川町大和地区,および浦臼町札的内地区の3地区に絞って,次の段階の調査として物理探査(精査)を実施した.探査結果は,図3−2−3(雨竜),図3−2−4(新十津川),図3−2−5浦臼),および図3−2−6(浦臼)に示されている.

地震探査と比抵抗電気探査などの結果をまとめると,以下のとおりである.

○ 深部探査(反射法地震探査)

・地層は成層的であり,西側(樺戸山地方向)から東側(石狩川方向)へ緩く傾斜しながら堆積している.

・リニアメント付近を中心にして,その西側と東側では,特に表層部(第四紀層および鮮新世後期堆積層)の堆積状況が異なる.新しい堆積物が厚く分布するところから,第四紀を通じた活動が考えられる.

・広域応力場の影響によるいくつかの断層系が指摘できる.

○ 浅部探査(電気探査およびその他の探査)

・表層20mまでの比抵抗構造は,概ね成層(2層構造)を成しているが,部分的に高比抵抗部を挟む.

・補助的に実施したVLF法電磁法探査では,深度30m付近までの平均的な比抵抗構造の境界を反映していると見られる電流密度の高い地点がある.

・バイブレータ電源を用いた浅層反射法(浦臼地区のみ実施)では,活断層と関係が深いと考えられる構造が指摘された.

以上の調査結果を総合的に考慮すると,活断層の存在と運動の形式,および活動度をより直接的な手法で確認すべき地点として,以下の3地点があげられた.

○ 雨竜地区(測線300m地点付近):

・深部探査から推定される断層の延長部(300m)

・表層の電気探査(ブロック状の高比抵抗帯:300〜310m)

○ 新十津川地区(測線560〜620m地点付近):

・深部探査から推定される断層の延長部(560m)

・VFL(比抵抗構造の段差:620m)

○ 浦臼地区(測線520m地点付近):

・深部探査から推定される断層の延長上

・重力異常

・浅層反射法から表層堆積物の不連続(520m)

・電気探査(高比抵抗帯と低比抵抗帯の漸移部)