(5)地質および地質構造

調査地域周辺の新第三系〜第四系は,北部の雨竜・新十津川(滝川・妹背牛)地域と南部の浦臼・月形(晩生内・札的内)地域で層相や年代が異なり,異なった名称で呼ばれている(表3−1−1).調査地域にはおもに鮮新〜更新統が分布する.

【雨竜・新十津川地域】

北部地域の鮮新統は深川層群と呼ばれ,下位より幌加尾白利加層,一の沢層,および美葉牛層に区分される(小林ほか,1957;日本の地質北海道地方編集委員会編,1990).幌加尾白利加層は海成細粒砂岩を主とする.Fortipecten takahashiiを含み,珪藻化石から鮮新世前期(6.6〜1.89Ma)の堆積物とされる.一の沢層は,軽石凝灰岩・凝灰質砂岩・礫岩を主とする海成層である.美葉牛層は,調査地域の北方の北竜町美葉牛付近を模式地とする地層であり,陸成の砂岩・泥岩を主とし,凝灰岩と亜炭を伴う.調査地域の一の沢層および美葉牛層には,玄武岩〜安山岩質火砕岩層が挟在する.なお,地質図幅「妹背牛」(小林ほか,1969)・「滝川」(小林ほか,1957)で,広い段丘堆積物の下位に分布するように表現されている美葉牛層は,ほとんどが砂礫層である.

更新統は,河成段丘堆積物である.

本地域の鮮新統は中新統とともに,西緩東急の非対称な褶曲構造をとっている.特に,後述する樺戸断層群セグメントaにあたる雨竜町新生〜豊里から,新十津川町志寸付近までの撓曲帯付近は,滝の沢背斜と呼ばれる背斜構造の東翼にあたり,鮮新統は急立し,一部は逆転する.

【浦臼・月形地域】

浦臼から月形にかけての鮮新統は,当別層および厚軽臼内層に区分される(垣見・植村,1958;松井ほか,1965;日本の地質北海道地方編集委員会編,1990).当別層は,おもに層理の不明瞭な青灰色細粒砂岩からなり,北部の幌加尾白利層に対比される.厚軽臼内層は,斜交成層の発達する凝灰質砂岩〜軽石質からなり,一の沢層に対比される.これらを覆う河成段丘堆積物は,一括して浦臼層と呼ばれている.

なお,これまで地質図幅で厚軽臼内層として塗色されている地域の一部には,凝灰質砂岩層を不整合に覆って厚い礫(岩)層が分布する.これらは,これまで浦臼層と呼ばれていた地層の一部に相当するものと考えられるが,見かけの厚さが200mに達する場合もあり,再定義が必要である.この報告では,とりあえず“厚軽臼内層上部”と呼ぶ.この地層は層序関係から前期更新統と推定される.

本地域の地質構造を特徴づけるのは,先新第三系ブロックの上昇と,南東方向へのブロックの張り出しに関係するとみられるNE−SW系の断層と撓曲である.最も規模の大きな断層は,於札内川上流から札的内川にかけて分布する浦臼断層である.この断層は厚軽臼内層を切る西傾斜の逆断層であり,古くから活断層の可能性が指摘されている(松井ほか,1965;活断層研究会,1991).また,札的内川上流から晩生内にかけて,厚軽臼内層上部を切るN−S〜NE−SW性の東傾斜低角逆断層(札的沢断層)が認められる.これらより平野側の厚軽臼内層は一般に10〜15゜程度の傾斜であるが,後述するセグメントcの撓曲崖にそって厚軽臼内層は40〜70゜の撓曲を示す.札的沢断層はこれらの撓曲下に伏在する逆断層のバックスラストに相当する可能性がある.