(5)データ処理

磁気テ−プに収録された探査デ−タについて,図3−2−2−2に示すフローチャートに従ってデータ処理を行い,重合処理断面図,マイグレーション処理断面図,深度変換断面図を作成した.

A.データ処理に用いたハードウェアおよびソフトウェア

ハードウェア,Power Challenge,Silicon Graphics他及び周辺機器

ソフトウェア DISCO (バッチ型)aradigm FOCUS (会話型)

B.処理内容及び主要パラメータ

以下に主要な処理項目の処理方針を示すとともに決定した主な処理パラメータを表3−2−2−4に示す.

(a)静補正

Focusシステムでは,タイムターム法を基本とした静補正解析ソフトウェアを搭載し,解析は基本的に2層構造で行っている.図3−2−2−3の靜補正結果に示すように,第1層の速度は100m/s,第2層目の速度は500m/s程度であり,5倍程度の速度コントラストがあることが分る.この程度の速度コントラストがあると,1つの速度関数でNMO補正を適切に行うことができない.通常の反射法データ処理では,データム標高(時間断面上で0msに対応する標高)を第2層目に設定して,それより深い部分のデータのみを扱うので,この速度コントラストは問題にならないが,本測線は特に浅部を探査対象にしているため,この境界の反射面を考慮する必要がある.そこで,データム標高を空中に設定するとともに,次項に示すようにデータを分割して別々に速度解析,NM0補正を行った後に合成することで,この問題に対処した.

(b)データ分割・合成

重合前のデータを考察し,データのオフセットを制限して重合処理を行い,断面の比較をすることで,第1層と第2層の境界面からの反射波は,主にオフセット40mまでの記録に含まれていることが分った.そこで,オフセット0〜39mまでの記録(ニアトレースと呼ぶ)と40m以遠の記録(ファートレースと呼ぶ)に分割して処理することにした.ニアトレースの速度関数は,静補正解析結果の速度を参考に100m/s前後の速度のみを用いて定義した.ファートレースの速度関数は,50CDP間隔で速度解析を行い決定した.そして,各々の速度関数でNMO補正を行った.データの合成に当たっては,速度を限定することで,適切にNMO補正が行われていない部分を取り除き,分割した各データの振幅を調整することで適切に重合処理を行えるよう留意した.ニアトレース,ファートレースの各オフセットを限定した重合断面を図3−2−2−4に,合成後の重合断面を図3−2−2−5に示す.

(c)マイグレーション

マイグレーションのアルゴリズムは,有限差分法を採用した.マイグレーションに用いる速度は,ファートレースのNMO補正に用いた速度関数の80,100,120%の3ケースでテストを行い,決定した.ニアトレースの速度関数は,マイグレーション処理の効果の少ない浅部の速度なので考慮しなかった.

(d)深度変換

本測線は,測線上でボーリング及びS波速度検層を行っているので,それらを参考に深度変換を行った.