(3)測量及び測線状況

A.測量

調査開始に先立ち,反射法探査測線の受振点位置の設定及び測量作業を実施した.道路上での受振点の設定については,上下水道管,ガス管の埋設情報を参考にして,これら埋設管の影響をできるだけ受けないように,道路の縁や場合によっては民地にクレヨン,スプレーなどで受振点をマーキングした後,トータルステーションを用いた測量を実施した.

B.測線状況

(a)八幡測線

本測線は,東海道本線と小泉川の交差地点から,小泉川河川敷道路,桂・宇治・木津川の三川合流地点を経て,木津川河川敷道路沿いの京阪本線踏切まで,北西−南東方向に延びる測線長約3kmの測線である.測線は,小泉川河川敷道路,桂川と宇治川の河川敷,木津川河川敷道路に大きく三つに分けることができる.

小泉川河川敷道路では,その道路自体の交通量は比較的少ないため,それに伴う雑振動は少ないが,名神高速道路,国道171号,東海道山陽新幹線などを跨ぐため,その付近では雑振動が大きかった.受振器の接地状況に関しては,交差点以外のほぼ全域にわたり道路脇の地面に直接設置することができ,良好であった.

桂川,宇治川河川敷では, 工事用の大型車両が時々一部測線沿いを通過する以外は,雑振動はほとんどなかった(大型車両通過時は,測定を中止した).受振器の設置状況は,小泉川河川敷道路と同じく地面に直接設置でき,良好であった.

桂川においては,ハイドロフォンを用いてできるだけ重合数が減らないようにデータを取得したが,水深が浅く,大雨の影響で流れが強かったため,データの品質は良くなかった.また,桂川左岸側の約50mの区間では,バイブレータ震源が進入できなかったためドロップヒッター(小型の重錘落下震源)を用いた.宇治川においても,ハイドロフォンを用いた.水深は十分あったが桂川以上に流れが強くデータの品質は,同様に良くなかった.

木津川河川敷道路においては,小泉川河川敷道路同様に交通量は少なく,交差する大きな道路も京阪国道だけで,雑振動は少なかった.受振器の設置状況に関しては,全域で直接地面に設置でき,良好であった.

(b)桃山南測線

本測線は,山科川を中心に,桃山御陵入り口から桃山南団地までの範囲であり,ほぼ北北西−南南東方向に設定している.測線状況は,桃山御陵通り,丹後橋通りの2つの通りと,それら通りのちょうどつなぎ目に当たり,外環状線,京阪電鉄宇治線,山科川が交差する付近の大きく3つに分けることができる.

桃山御陵通りは,日中交通量が非常に多いため,作業を行うと渋滞を招く上,大きな雑振動が予想された.そこで,測線区間は民家と離れていることもあり,観測作業は交通量の少ない夜間に行った.受振器の接地状況は,一部アスファルト舗装部分を除きほぼ全域で直接地面に設置でき,良好であった.

丹後橋通りも日中交通量が多く,雑振動が予想された.しかし,桃山御陵通とは異なり道路が民家と接しており,夜間作業は住民に多大な迷惑をかけるため不可能だった.受振器の接地条件は,桃山団地内では地面に直接設置できたが,他はほとんどアスファルト舗装のため,金属製スタンドを用いて設置した.

外環状線から山科川にかけては,約100mの区間,受振器を設置する場所がなかった.また,発震は,宇治線の踏み切りがあり,この部分で発震すると大きな渋滞を招くため,ほとんどできなかった.ただし,脇道等に入りオフセットをとって発震を行い,できるだけ重合数が減らないように測定を行った.

(c)小栗栖−石田測線

本測線は,小栗栖宮山小学校から石田大山までの範囲で,ほぼ北西−南東方向に設定した.測線状況は,小栗栖宮山小学校敷地内から新小栗栖街道までの道路と,新小栗栖街道から外環状線までの道路,そして外環状線から石田大山までの道路の3つに分けることができる.

小栗栖宮山小学校から新小栗栖街道にかけて,震源が進入できる車道は,屈曲しているが,その道から少し離れたところに受振器を直接地面に接地できるほぼ直線の歩道がある.接地条件などの利点もあるので,受振器はその歩道に設置した.また,それら車道,歩道ともに交通量は少なく,雑振動は少なかった.

新小栗栖街道から外環状線までは,比較的交通量が多く,雑振動は大きかった.ただし,道路が広いため,交通の障害となることなく発震作業を行うことができた.受振器の接地状況は,山科川より西側はほとんどアスファルト舗装であるが,東側から外環状線にかけて合場川の河川敷を利用して,直接地面に接地することができ,良好であった.

C.使用機器

P波反射法探査で使用した機器類を以下に説明する(表3−2−1−2表3−2−1−3).

(a)震源 

震源には主としてバイブレータ震源を用いた.これは爆薬や重錘落下震源のようなパルス波形を発生する震源とは異なり,地面を一定時間上下に揺らして地下に振動エネルギーを伝達させる装置である.発震にはスイープ波形と呼ばれる周波数が徐々に高くなる波形を用い,連続的に地中に振動エネルギーを送信する.この波形は受振器で受振した後,記録器内で相関処理を行ってパルス型震源と同等の信号に変換される.バイブレータ震源はトラック後部に搭載されており,発震点まで自走できる.発震点では,震源車の自重を利用して路面との密着性を高め,エネルギー伝達効率を向上させて発震する.バイブレータ震源は,パルス型震源と比べてノイズに強く,しかも繰り返し発震しても路面にはほとんど損傷を与えない.また,騒音も加速型重錘落下震源よりも小さく,自走式で移動が容易なことから,市街地での反射法探査には有効である.

今回実施した測線のうち,八幡測線の桂川,宇治川河川敷において一部バイブレータ震源車両の進入が困難な場所があった.漁業権の問題より河川での水中発震ができないことから,データ欠損を可能な限り低減する目的で,車両進入が困難な河岸付近では,小型重錘落下型震源(ドロップヒッター)を用いた.

(b)受振器

陸上部の受振器は固有周波数40Hzで,6個の受振器を組み合わせた多連式の上下動型速度計を用いた.多連式受振器は表面を伝わる振動ノイズを減衰し,かつ地下からの反射波を強調する効果がある.受振器は受振器スパイク部を地面に直接差し込んで固定・設置する方式を基本としたが,アスファルト舗装が施されている道路で,近傍に裸地が無い場合には,金属製スタンドを介してアスファルト路面に設置した.金属製スタンドは舗装道路上での反射法探査で一般的に用いられる補助器具で,これまでの活断層調査などでも使われている.

また,桂川・宇治川の河川横断部では,データ欠損がなるべく生じないように,水中でも使用可能なハイドロフォン形式の受振器(ベイケーブル)を用いた.

(c)地震探鉱機

ディジタル地震探鉱機は外部入力切替スイッチ,モニタープリンター,データレコーダー等の周辺機器と共に構成されている.