(1)淀測線の調査結果

図1−4

A.基盤岩(丹波帯中・古生層)上面の深度分布

名神高速道路や新幹線を横切る測線の北西側(CDP50〜150)では,基盤岩は標高−300〜−350m程度に潜在するが,南東方向へ大きな起伏を伴いながら徐々に深くなり,桂川付近(CDP450?550)では標高−600m程度に分布すると推定される.先の桂川測線延長部に交差するCDP550より南東側では,基盤岩上面に対応する反射面は得られておらず,基盤岩の潜在深度は不明である.測定系に大きな変更はなく,データ品質も問題があるとは考えられないことから,基盤岩に対応する反射面が認められない要因として基盤岩上面の大きなまたは複雑な起伏変化などの可能性が考えられる.

B.大阪層群の構造

大阪層群は基盤岩を覆って分布するが,反射パターンおよび区間速度などから上部・下部に区分される.

大阪層群上部は,測線北西端では標高−100m程度まで分布するが,南東方向に向かって徐々に深くなり,CDP650では標高?250m程度まで分布する.しかし,CDP650?750を境にして,その南東側では,標高−400m程度まで分布し,一気に深くなる.本層内には,砂・粘土互層を反映した反射面が多数認められ,細かな堆積構造を明瞭に読みとることが可能である.各反射面の形態から,測線始端からCDP650にかけては,地層は概ね緩やかな南東傾斜と推定されるが,CDP50〜200にかけて,地層が急傾斜となる撓曲(撓曲帯と表示)が認められた.また,CDP450では,反射面に10数m程度の変位が認められた.さらに,CDP650〜750付近でも地層が急傾斜となる撓曲(撓曲帯と表示)が認められ,下位の地層ほど急傾斜となっている.一方,測線終端側に当たるCDP750〜900にかけては,それまでと異なり,地層は緩やかな北西傾斜となっている.

大阪層群下部は,CDP1〜425付近では約200m程度の層厚で分布するが,CDP450〜550付近では350m程度と層厚が増している.それより南東側は,基盤岩上面に対応する反射面が得られていないことから,層厚は不明である.上部に比べて反射面の連続性は良くないが,ほぼ上部と調和的な堆積構造が認められる.

大阪層群上部/下部の境界は,CDP50〜200では約100m程度,CDP650〜750では130〜150m程度の標高で分布しており,分布標高にくいちがいが認められる.

C.断層・撓曲

本測線では,CDP50〜200区間およびCDP650〜750区間の2区間で大阪層群相当層中に撓曲(撓曲帯で表示)が認められた.前者は,測線始端付近に位置し,基盤岩の形態については不明瞭である.灰方断層(岡田・東郷2000)の南への延長部に当たり,相対的に東落ちのセンスなどから灰方断層の延長とも考えられるが,これだけでは特定が難しい.

一方,後者は,基盤岩上面に対比される反射面は得られておらず,前者同様に基盤岩の形態は不明である.しかし,大阪層群相当層の堆積構造の形態や撓曲(大阪層群上部/下部境界の変位;約150m)は,先に実施した三栖測線および京都市(1999)(堀川?巨椋池測線)の結果と類似して,さらに,両測線の撓曲(撓曲帯と表示)を結ぶ延長線上にCDP650〜750の撓曲((撓曲帯と表示)が位置することから,この撓曲は宇治川断層と判断した.

また,上記以外に,CDP450付近の大阪層群相当層に10数mのくいちがいが認められた.この付近では直下の基盤岩上面に大きな起伏が認められるが,その起伏量(150m程度)に比べて大阪層群相当層のくいちがいは小さい.複数の反射面のくいちがいに明瞭な累積性は認められない.この10数mのくいちがいを断層によるものと解釈するには証拠がすくなく,成因は不明である.