1−5−7 まとめ

平成12・13年度に亘り,宇治川断層を対象にP波探査,S波探査およびボーリング掘削と試料分析を行って,断層の諸性質を明らかにした.

(1) 宇治川断層は,桂川,宇治川合流付近から東北東方向に宇治川に沿って延び,桃山丘陵から方向をやや北に変え,桃山丘陵南東縁を走る.小栗栖付近の丘陵と山科川間に宇治川断層を想定したが,そこに断層存在の証拠は得られなかった.一方,西南西延長の有馬?高槻構造(断層)帯高槻?天王山断層に断層はは繋がらないが,さらに西方に延びる.確認された長さは約9kmである.

(2) 八幡測線から観月橋測線までの長さ8kmの区間,各測線に共通して現れるB1反射面を基準とすると,宇治川断層の変位量は30m程度のほぼ一定であると推定される.B1面は分布標高を基し,ボーリング調査で明らかにされた地層と対比すると,BT74火山灰層準(36万年前)と大阪層群海成粘土層Ma9(40万年前)間の層準に,位置する.

(3) 宇治川断層の最新活動時期は約1~3千年前と推定される.1回当たりの変位量は2m弱で,平均活動間隔は1万数千〜2万数千年である.少なくとも52万年前以降の長期的な鉛直平均変位速度は0.09~0.12m/千年,B級最下位?C級上位である.このような宇治川断層の活動で,少なくとも約70万年以降,上盤側の京都盆地北部と下盤側の南部との分化は促進された.

(4) 36万年前(BT74火山灰層準)以前の盆地南部(断層下盤側)の堆積(沈降)速度は0.63m/千年で,盆地北部(上盤側)は0.43m/千年であるのに対し,それ以降の盆地南部(下盤側)の堆積速度は0.11m/千年,盆地北部(上盤側)は0.03m/千年となり,36万年前を境に,以降の盆地の沈降速度は,以前の約10~20%に激減することが明らかとなった.