(4)珪藻分析

V層のシルトの多くは,灰緑色で,散在する藍鉄鉱から淡水成と思われた.しかし,一部で,青灰色の海成を示唆する部分がある.No.3V層上部を中心に,その部分を分析した(図1−18).

A.No.1ボーリング試料

標高−30.4mと−31.4mのシルト中の珪藻化石は共に,淡水生種を主体に海水生種,海水〜汽水生種,汽水生種を伴った種群で構成される.淡水生種の占める割合は65〜83%で,内湾〜沿岸の環境下で堆積したものと考えられる.

B.No.2ボーリング試料

標高−27.3mと−28.3mのシルト中の珪藻化石は共に少ない.沖積地等での氾濫堆積の可能性が考えられるが,確定ではない.

C.No.3ボーリング試料

7層準のシルト試料を分析した.3試料は充分な化石が得られなかった.標高−41.9mのものは,すべて淡水生種であり,堆積時は低地の水の影響が少ない場所であった可能性が考えられる.標高−72.9m,−73.9mのものは共に,海水生種,海水〜汽水生種および汽水生種等の海域の種群で構成される.いずれも沿岸海域や内湾に生育する種群である.標高−84.9mのものには珪藻は少ないが,海水生種と淡水生種の混在から沿岸低地?デルタが推定されるが確かではない.

分析結果と層相の特徴などからNo.1標高−30.4~−31.4mとNo.3標高−72.9~−84.9mのシルト層は共に内湾〜沿岸海域の環境を示し,Ma9層準の可能性が示唆された.