(2)地質構成

表土を除いて,肉眼観察で,上部から下部の順にT~V層に分けた.T層は表層のシルトを主体とする地層である.その下位に分布する礫層は色調から上位の灰色礫層と下位の褐色礫層に分けられる.上位の灰色礫層をU層とした.褐色礫層とその下位の砂・シルト互層を一括し,V層とした.両者は漸移的に層相が変わる.

A.T層(暗灰色シルト層)

T層は腐植質シルトを主とし,薄い砂層を挟む.暗灰〜暗緑灰で,軟弱である.淡水成堆積物を示す藍鉄鉱が点在している.巨椋池周辺の低湿地〜湖沼堆積物である.No.1で層厚は約7m,南側のNo.3では約11mと南側で厚くなる.No.1標高2.7m付近に微量な鬼界アカホヤ火山灰起源の火山ガラスを観察した.下位のU層とは不整合関係で接する.

B.U層(灰色礫層)

U層は,T層直下の暗灰〜オリーブ黒色の礫を主とする地層で,No.3ではU層最上部にやや厚い砂層や腐植質シルトを伴う.この部分の一部は花崗岩起源の砂を交えるが,他の部分の礫や基質の砂は中・古生層起源である.礫層中に粗粒砂を挟むこともあるが薄い.礫径は5~10mmの中礫が多い,一部で40~50mm径の礫や砂分の多い部分もある.亜円〜円礫が多い.礫種はチャートが多く,次いで砂岩,頁岩である.基質は粗砂である.No.1で層厚は約7m,基底面標高は−5.4m付近である. No.2で層厚は約12m,基底面標高は−10.8mである.No.3で層厚は13m,基底面標高−12.4mである.南側のNo.3で層厚は大きく,基底面標高は低くなる.下位のV層とは不整合関係と思われるが,境界付近で色調以外に構成物に顕著な差異は認められず,両地層の関係は明瞭でない.

C.V層(褐色礫層〜砂シルト互層)

本層の上部は黄褐色?褐色礫層が卓越し,下部は砂シルトの互層が卓越する.No.3ではこの区分は明瞭で,その境界は標高−71.4m付近である.No.1,2でこの境界は漸移し,明瞭でない.幅広く見ると層相の変化は明瞭である.No.1標高−28.9m付近,No.2標高−53.8m付近を境界とした.

褐色礫層は,5~20mm径の円?亜円礫を主体として,チャート,砂岩,頁岩礫からなる.一部に腐植物を含む層厚1~2mの砂あるいはシルトを挟む.No.3標高−42.6m付近のシルト中に角閃石を含む火山灰(BT74)がある.

花崗岩起源の石英や長石など花崗岩起源の礫層基質の白色砂が最初に目立って,増える層準がある.No.1~3の順に,その層準の標高は−26.4m,−47.3m,−64.4mである.

下部の砂シルトの互層部分のシルトは殆どが暗緑灰色で,藍鉄鉱が散在し,淡水成と判断される.No.3標高−72.4m付近やNo.1標高−112.9m付近等に海成粘土を示す青灰色に近い色調のシルトが僅かに散在する.シルトには腐植を含むことが多い.砂は細礫を含む粗砂が主体である.後述するように,No.1標高−140m付近の火山灰(八丁池T)とNo.3標高−143.4m付近の桃色の火山灰(サクラ)および標高−165.9〜−167.3mの白色火山灰(佐川U)を観察している.

D.コアに現れた構造

砂層やシルト層中の葉理面(ラミナ)あるいは層理面の傾斜角を図1−14にまとめた.

No.1の中〜下部で測定できた.そこでは,ほぼ5~10度程度の傾斜が認められる.15~20度を示す部分は極僅かである.

No.2では標高−70~−80m付近のみ測定できた.ここでは,20−30度とやや高角度を示す部分があった.

No.3では,中?下部の砂質〜シルト質部分で測定ができた.殆どが10度程度以下であり,20度を超す部分は測定数の中で低率である.

S波探査からNo.3付近の反射面はほぼ水平で,堆積面も同様と判断される.No.2の標高−30m付近で10度,標高−70mで20度の反射面の傾斜が読み取れる.従って,No.2の30度程度のものは,断層との関係があると考えられる.それ以下の傾斜については,初生的な堆積構造の可能性もあり,識別できない.

シルト中の潜在せん断面は乾燥すると顕在化する.No.1の標高−98〜102m付近に70~80度,No.2の標高−57m付近に50~60度,No.3の標高−100m付近に10度で傾くせん断面と標高−170m付近の60~70度のせん断面を観察している.高角度のせん断面は,断層の変形(塑性変形)限界を越える応力での小規模な破断と見なせる.