1−7−2 反射法探査

京都盆地東縁,地下深部の基盤構造を解明することを主目的とした。

本調査では解析深度の深いP波反射法探査を採用した。反射断面図を図1−1に示した。

図1−1 反射法探査測線位置地図と解釈断面図

・基盤構造

測線下に想定される基盤は丹波帯中・古生層で,西山断層,山科盆地の調査などの既往の反射法探査では基盤上面に相当する明瞭な反射構造は認められていない。これらの調査では基盤上面の形状は,大阪層群に特有な連続的な反射構造が認められる部分と連続的な反射構造が認められない部分の境界面で基盤上面を推定した。

今回も基盤上面からの明瞭な反射波は認められなかったので,同様の方法で基盤上面の形状を推定した。

基盤上面構造は測点200m付近を境にして,西側は水平に近いなだらかな形状を呈し,測点−300m付近から若干傾きを増して,約5°程度の傾斜で西に深くなる傾向を示す。一方,測点200m付近では下に凸の傾向で変形しており,20〜30°の傾斜で東に向かって浅くなる形状を呈す。測点350m付近で曲がり方を変えて,上に凸の傾向を示す。測点650mから東側では基盤は地表に露出していると考えられる。

・大阪層群の構造

反射断面中の多数の反射波は大阪層群に特徴的なものである。大阪層群は基盤上面の構造と類似した傾向で分布している。測線下では測点150m付近及び測点−400m付近が最も深く,大阪層群基底部の標高は−140mに達する。この部分の大阪層群の層厚は約150m程度と見積もられ,これは深草団体研究グループ(1962)の調査結果から見積もられた層厚130mと大きく違わない。測点100m付近から大阪層群内の反射波は徐々に東に浅い方向で,10〜20°の傾斜を示す。なお,今回の群列ボーリングの結果からも同様の傾斜が確認されている。測点200m付近から東側では,桃山断層のリニアメントが通過する部分を含めて,さらに東側に向かって反射波の連続性が乱されており,断層活動に伴う地層の変形構造が推定できる。測点300mから東側では反射波の断列が激しく,反射波を連続して追跡できないが,断片的な波形から推測すると,大阪層群の傾斜は東側でさらに大きくなるようである。

一方,測点200m付近から西側は安定して連続する多数の反射波が認められ,この範囲では断層による反射波の乱れは認められない。この範囲の大阪層群は西に緩く傾斜した形状を示し,−300m地点からは基盤構造の変化と調和して,やや深くなる傾向が認められる。−255m〜−295m区間で琵琶湖疎水及び師団街道を横断している影響で,浅部の反射構造が得られていない。なお,大阪層群上部の洪積層,沖積層内の反射面及び大阪層群上面の形状は確認できなかった。

・断層・撓曲構造

大阪層群の連続性から,測点200mから500mにかけて桃山断層に相当する断層群が推定された。これは空中写真判読の結果で認められた撓曲崖の位置に相当する。大阪層群の反射面の断続状況から断層面を推定した結果,傾斜は60〜70°程度である。測点650m付近の断層は地表で確認されている稲荷山断層に相当すると解釈した。この部分は大阪層群の反射構造が認められないので,断層面の傾斜は不明である。撓曲構造は浅部では測点50m付近から東側で,深部では150m付近から東側で認められる。この付近では向斜構造を示している。なお向斜軸は西に傾斜している。測点−300mから−350m付近にも撓曲構造が認められる。この付近では空中写真判読の結果,撓曲崖が認められている部分に相当する。