1−7−1 予備調査

文献調査及び地形地質調査の結果,桃山断層は深草付近を境目として,北と南で地質構造がやや異なる。それぞれの地域の状況は以下の通りである。

・深草以北

深草以北は大阪層群と丹波帯中・古生層の境界に大阪層群を切る断層(稲荷山断層)が確認され,その前縁には,低崖が断続的に伸びる。大阪層群及びその上位に載る段丘堆積物は10〜30°西側に傾斜している。傾斜は東側ほど急になる傾向が見られる。また,大阪層群の走向は稲荷山断層の走向にほぼ平行である。

深草地域を詳細に踏査し,作成された深草団体研究グループ(1962)の地質図から,深草地域以北の大阪層群について考察を行った。その結果,稲荷山断層近傍では大阪層群中部層(Ma3以深)が分布するが,多くはMa3より浅い地層が分布すると推定された。

東福寺南で行ったボーリング調査では大阪層群の傾斜は10〜18°程度であり,また,平野側のボーリングで観察された大阪層群に含まれる粘土層は海成であると推定されることは矛盾しない。

・深草以南

深草地域,名神高速道路以南では大阪層群及び桃山礫層(高位段丘層)が観察され,東側には丹波帯中・古生層が観察される。

丹波帯中・古生層と大阪層群の関係は不整合である。大阪層群は南北から北東−南西方向の走向を示し,傾斜は10〜20°程度である。

既存ボーリング結果から,地質断面図を作成し,地表踏査では分からない地質構造について考察を行った。既存ボーリングは主にJR奈良線の西側に集中し,東側の大阪層群及び段丘堆積物が広く分布する地域の資料は少ない。今回はボーリングデータの粘土・シルト層のN値を基準にし,地層対比を行った。

各地層のN値から大阪層群とその上位に堆積した段丘堆積層及び沖積層を区別し,それぞれの傾斜角度を推定した。

大阪層群の地層の傾斜は南ほど緩く,さらに西ほど緩くなる傾向が見られた。また,大阪層群の上位の堆積物については1〜5°程度の緩い傾斜が想定された。

また,伏見地区に見られる撓曲崖下の地層については今回の調査では大きな地層の食い違いは認められなかった。