7−2 日野地区(御蔵山断層)について

伏見区西野山地区で行った、トレンチ調査とボーリング調査、及び各所分析結果を総合し、図7−3に示す日野地区の調査結果図を作成した。

当地区では表土層を除くと、低位段丘層とその下位の大阪層群に区分される。

大阪層群を覆うように分布する礫層は、撓曲崖の東側で行ったトレンチ調査、撓曲崖の西側で行ったボーリング調査によって、ともにチャートを主とする新鮮で硬質な礫を非常に多く含む堆積物で同一層と判定した。新鮮で大きな礫(最大径300mm)を混入すること、基質の締まり具合が悪いことから低位段丘層(段丘礫層とも呼ぶ)に対比した。

段丘礫層は撓曲崖の東西両側で2m程の一定した層厚で分布している。同礫層の上面は、撓曲崖(推定断層面)をはさんで、約3mの比高差を示すが、この比高差が断層によるずれか撓みかは明らかではない。

大阪層群中のシルトと細粒砂とのラミナを詳細に観察した結果、クロスラミナが逆転していること、粘土層と砂層の境界では粘土層の下側が酸化していることから、地層が逆転していることが明らかになった。さらに、ほぼ垂直に立っているラミナや約40゚のへき開面が平行に発達している部分もあり、ボーリング孔付近の地層は著しく変形していることが明らかになった。

トレンチ区間とボーリング区間の距離は、約10m離れている。この区間の間に、ほぼ水平から約20゚に傾斜する地層(トレンチ側)と逆転あるいは高角度に傾斜した地層(ボーリング側)が隣り合って分布していることから、撓曲や多少のドラッグ(引き摺り)を伴う断層運動ではこの構造を解釈できないため、ドレイプ褶曲モデル(図7−3)を用いて、本調査地の地質想定断面図(図7−3)を作成した。

さらに、トレンチ箇所の南方約250mの地点で発見された段丘堆積物を切る活断層露頭は、地層のずれの方向が、御蔵山断層本体の西上がり東下がりとは逆に、東上がりとなっている(図7−4)。この形成機構は、図7−5に示す褶曲運動に伴う層面滑りと解釈した。断層露頭付近は図7−5の右下図の状態であろうと推定される。以上を踏まえて、図7−6に示すように御蔵山丘陵付近の地下地質構造概念図を作成した。