(2)地質構造の解釈

反射波の特徴を踏まえて、L1測線の地質構造を解釈した。

測点1100m付近の深部では反射面のたわみが見られるが、浅部では反射波の振幅低下が見られる。地表ではこの付近に背斜軸が確認されており、さらに、山科川の河床れきが広く分布すると考えられることから、これらの原因で良好な反射面が形成されなかったことによると考えられる。測点400〜700mには背斜構造が見られ、地表では680m付近に背斜軸が確認されている。測点450〜500mでは反射面が分断されている様子が確認できる。これら2地点の褶曲構造は、反射断面に表現されていて、大阪層群が堆積した後に東西圧縮によって褶曲を受けた様子が推察される。

測点700mから図面右側で、深度−300〜−200mの反射面が青線のところで消滅し、大阪層群内の地層がここでアバットする様子が表現されている。これは、この部分の大阪層群が堆積する時代には、すでに青線の地形が存在していたことによるものと考えられる。なお、既存資料から京都盆地及び山科盆地では、大阪層群は基盤に相当する中・古生層と不整合であること、大阪平野で行われた反射法探査で大阪層群内は明瞭な連続した反射面が得られていること、データ処理時の区間速度値が周辺の中・古生層内で実施されたPS検層の速度値に矛盾しないなどのことを考慮した結果、反射面の不連続部分に当たる青線部分を、この地域の基盤岩である中・古生層の上面に相当すると解釈した。

図4−21にL1測線の0m〜700m区間を抽出して地質構造解釈の一例を示した。この図の測点400m〜650m区間で、大阪層群内の反射波が途切れたり振幅が減少する部分は、断層に起因すると解釈し、西落ちの逆断層であるF1からF3断層を解釈した。これらの断層は東西圧縮運動によって生じ、その結果、褶曲構造が形成されたと考えられる。標高−100m以浅の反射面のうち、測点450m付近を境にして左側で反射面の間隔が広くなっているのは、F3断層の活動によって断層西側の堆積速度が変化したことに起因するものであると考えられる。

同図の測点0m〜200m区間でも再び大阪層群内の反射面が途切れる様子が見られる。これも断層運動によって生じたものと判断し、西傾斜で東落ちの逆断層系のF4断層を解釈した。なお、この断層を境にして左側では深度−70〜−50mに左上がりの反射面が確認できるほかは、顕著な反射波は認められず、波形も乱れている。なお、都市圏活断層図では、測点180m付近に勧修寺断層が記載されており、F4断層は東落ちの勧修寺断層と何らかの関係があると考えられる。

なお、大阪層群内の反射波群は1500m地点を例にした場合、−120m以浅と−180m以深で、連続した明瞭な複数の反射面が認められた。この中間ではあまり顕著な反射波は確認できない。ここでは、上部を海成粘土層を含む上部大阪層群、下部は砂礫層主体の下部大阪層群と解釈した。海成粘土層部分と解釈した部分では、反射断面からは6〜7枚の反射面があり層厚は100m程度であることが確認できた。なお、L1測線周辺では深部まで掘削されたボーリング資料がなかったため、反射面と地層の対比はできなかった。なお、本測線での基盤最深部は山科区役所付近で、標高約−320mであると推定した。ここでの大阪層群の層厚は350mに達すると推定した。