(2)山科盆地東縁

小野断層北部、名神高速道路京都東インタ−チェンジ付近では赤橙色化した中位〜高位段丘礫層が観察された。名神高速道路付近の礫層中には、花崗岩礫が混入している。

丹波帯は泥岩やチャ−ト、砂岩からなり、節理面は西縁と同様にリニアメントと直行するように発達している。

小野地区には段丘が発達しており、礫の様子から高位〜中位段丘に相当すると考えられる。段丘の前面に小野断層の明瞭な撓曲崖が観察されるが断層露頭、堆積物の傾斜などは観察されなかった。また、段丘面上には断層崖が確認されたが、周辺の段丘堆積物露頭には変形などは見られない。また、段丘の下部にあると思われる大阪層群は観察されなかった。山麓の黄檗断層北部ではリニアメントを挟んで東側に丹波帯が確認された。

小野地区の南側は、宅地開発が進み、露頭は確認されなかった。山麓の東側の山中では丹波帯が観察される。醍醐寺以南では黄檗断層系は山麓のリニアメントとその前縁のリニアメントにわかれる。山麓のリニアメントを境に東側には丹波帯が観察されるが、西側には点々と大阪層群が観察される。

石田地区ではため池の湖岸に大阪層群中の断層露頭が観察された(OB−1、図3−7)。

この断層露頭の位置は、黄檗断層山麓リニアメントと一致する。しかし、断層東側は丹波帯ではなく、良く締まったチャ−ト、泥岩の角礫を主体とする礫層が見られる。丹波帯は断層の約50m東側に露出しているが、礫層と丹波帯の関係は確認できなかった。

また断層西側の大阪層群は断層のそばでは東側傾斜を示すが、断層から30mも離れると西側傾斜35°程度になる。このような、リニアメント西側で傾斜が東落ちになり、少し離れると西側傾斜になるという傾向は、この地点以南で2箇所観察された。

しかし、断層露頭は上記の地点のみであり、断層東側に見られた礫層も他の地点では観察されなかった。山麓リニアメントの西側で数カ所の大阪層群露頭を確認したが、砂や小礫層が主体であり、傾斜は30°程度である。走向はほぼリニアメントに平行であり、山麓リニアメントが大阪層群を変形された断層であると考えられる。

ただし、丹波帯と大阪層群の関係については、境界を確認していないため、断層関係なのか、どうかははっきりしない。

黄檗断層前縁断層はリニアメント的に不明瞭であり、宅地開発も進み、段丘堆積物を含め露頭はほとんど確認されず、確認された露頭では傾斜構造などは観察されなかった。

山科自動車学校北東側では垂直に近い傾斜を持つ大阪層群が確認された。この位置は山麓のリニアメントが通る地点であるため、断層である可能性もある。ここより南ではリニアメントは見られず、南側で丹波帯が観察され、西側に大阪層群からなると思われる丘陵が見られる。

御蔵山断層は日野地区の西側に東落ちの断層として見られ、明瞭な撓曲崖を形成し、御蔵山断層東側に地溝帯を形成している。御蔵山団地内では宅地造成工事が行われており、特別に許可を得、工事現場に立ち入り踏査を行った。

御蔵山団地東縁において、御蔵山断層の副次的断層露頭が確認された。断層の走向は御蔵山断層と同じであるが、変位のセンスが逆であり、主断層ではないと判断された。断層露頭のスケッチを図3−8示す。

また、御蔵山丘陵上部において高位段丘に対応する赤褐色礫層を観察した。