4−3 調査地域の地質的意味

本調査地は先述したように京都盆地の西縁を形成する樫原断層の約500〜600m西側に位置している。この地域の広域的な地質図は,図12に示すように西山団体研究グループ(1967)によって作成されている。

図12 調査地周辺の地質図

本調査地域(京都大学桂キャンパスDクラスター地区)は図12中に示すとおりであるが,樫原断層による大阪層群の急斜帯の西側に位置する。この急斜帯は,調査地東端部のさらに約100m西側の露頭において確認されており,その走向傾斜はN12W,60Eを示し,樫原断層の方向性と一致する。しかし,調査地域に見られる正断層は,北西方向の走向(N25〜65W)を示し,樫原断層の走向とは一致していない。

このことは本調査地域が,基盤岩に生じた西側に傾斜する樫原断層(逆断層)の上盤側において,断層地塊西側の隆起帯の引っ張り応力場にあたるものと考えられ,調査地に見られる正断層は図に示されるように,主断層の活動に伴って形成された副次的な断層と推定される。これは,大阪層群海成粘土のMa2相当層準付近においても,樫原断層による隆起帯が形成されていた可能性があると推定される。

これらの模式図を図13に示す。

図13 樫原断層の模式断面図

樫原断層の活動性については,前述したように,大阪層群海成粘土Ma2相当層準を基準としてその平均変位速度を算出したが,断層の活動性を明確にするためには,他の指標を用いたより詳細な検討が必要である。本調査地域には,大阪層群海成粘土のMa2に相当する層準以外にも,調査地域の西部に時代未詳の厚さ約15m以上と推定される砂礫層が分布する。この砂礫層は層序的にはMa2層準の上位にあたると推定されるが,年代を推定する指標層が検出されなかったため,その形成年代は不明である。仮に,この砂礫層を植村(1990)が記載した大阪層群のMa7層準より上位の砂礫層に対比すれば,その鉛直変位は約210mとなる。一方,植村(1990)はボーリング資料より,大阪層群海成粘土のMa7が約130mの西側隆起していることを推定していることより,Ma7の堆積時以降においても断層の活動があったことを指摘している。これらの樫原断層に関する鉛直変位を示すと図14のようであり,その活動性はむしろ新しい地質時代の方が活発であった可能性があると推察される。

図14 樫原断層の活動想定模式図