6 おわりに

今回調査を実施した三峠、殿田断層には、数こそ多くはないが断層による変動を観察できる場所が存在している。このうち、三峠断層には高位段丘を変位させている断層露頭があり、三峠山からといし山の南麓では明瞭では、河の横ずれが明瞭である。一方、現在の殿田断層では、三峠断層ほど明瞭な断層変位地形は存在していないが、以前は日吉町に明瞭な断層崖が存在していた。この旧世木林地区に存在していた断層崖は、殿田断層の活動を知るうえで非常に重要な地点であったが、日吉ダム完成に伴う湛水によってダム湖中に水没してしまった。

京都府では、このような地質学的な重要な場所を下記の要領でピックアップし、「京都府レッドデータブック」としてとりまとめている。本調査地域からも、先の日吉町旧世木林地区が「殿田断層崖」として、また瑞穂町下村地区周辺が「三峠断層崖」として選定されている。

京都レッドデータの選定基準

 1)京都府の自然を代表する典型的かつ貴重な地形

 2)(1)に準じ、教育上・地形研究上注目すべき地形

 3)多数存在するが典型的な形態を示し、保存が望ましい地形

 4)動植物の生息生育地として重要な地形

 5)地域において生活と密着した存在であったり、ランドマークとして親しまれている地形

「三峠断層崖」は、学術上高い価値を有する地形のうち、現時点で軽度の破壊を受けており、 今後も破壊が続けば消滅が危惧される地形として要注意カテゴリーに分類している。このようなレッドデータブックに登録されている場所は勿論のこと、断層運動を推定するために重要な地形・地質情報(変動地形や断層露頭)が失われることの無いよう、強く切望する次第である。