(3)断層運動に関するパラメーター

1) 長さ

殿田断層の総延長は、約20kmである。ただし、日吉町殿田地区付近にて断層の走向および活動履歴が大きく変化しており、この場所を基準とすると、殿田断層の中西部は約14km、東部が約6kmの長さなる。

2) 平均変位速度

本調査のトレンチ等からは具体的な断層運動を示すデータが得られなかったため、最近の平均変位速度は求められなかった。しかし、丹波町役場西方に位置する河川の屈曲量が約60mであることが判明したため、この河川が最高位段丘面を下刻しているのであれば、最高位段丘面の離水年代である約40万年(植村,2001)という年代から、平均変位速度は0.15m/1000年と推定される。

 一方、日吉町の旧世木林地区で実施されたトレンチ調査によって過去3万年間の平均変位速度(縦ずれ)は、0.13−0.30m/1000年程度と見積もられている(植村ほか,2000)。

3) 最新活動時期

八栄東地区でのトレンチ調査により、この付近での最新活動時期は約40,000年前より古い可能性が高くなった。一方、植村ほか(2000)によって報告されている日吉町旧世木林地区での最新活動時期は、約2,000年前となっている。

4) 活動間隔

日吉町殿田地区以西では、最新の活動が確認されていないことから、この区間における活動間隔を推定することはできない。殿田断層における活動間隔としては、世木林地区におけるトレンチ調査で明らかにされており、この調査では最近の活動間隔は約3,740年と推定されている。

5) 想定される地震の規模と変位量

断層の長さから、表5−1に示した松田(1975)の経験式を用いて地震の規模を推定すると、断層全体(約20km)が活動した場合は、マグニチュードが7.0、断層変位量は約1.5mとなる。また、西部の約14kmのみが活動すると仮定した場合には、マグニチュードが6.7、断層変位量は約1.1mとなる。