4−1−2 最新の活動と活動履歴

殿田断層における活動履歴は、日吉町世木林地区において植村ほか(2000)によって詳細に調査されている。この調査では、B.C.395〜A.D.100に発生した最新の活動をはじめとして、過去11,000年間に3回の活動が確認されており、平均再来周期は約3,740年と推定されている(図4−2)。

本調査では、上記の世木林地区から西方へ約4km離れた日吉町八栄東地区においてトレンチ調査を実施したが、トレンチ内に露出している39,800−46,200年前の礫層は断層による変位を受けていなかった。断層がトレンチ内を通過していると仮定すると、この結果からは八栄東地区付近では、少なくとも約40,000年前以降には断層活動が起こっていないことになり、近傍に位置する同じ殿田断層において、八栄東地区と世木林地区における殿田断層の活動履歴には大きな違いが生じる。さらに、表4−1に示したように、八栄東地区と世木林地区では、断層の走向や活動様式にも違いが見られることや、世木林地区では断層運動によって低位段丘面に変位が見られるのに対し、八栄東地区より西側では、低位段丘への変位が見られないという活動履歴の違いが認められることから、この2地区は同じ殿田断層の中でも別のセグメントを形成している可能性がある。

植村ほか(2000)によると世木林地区における縦ずれおよび横ずれの平均変位速度は、どちらも0.2−0.3m/1000年程度と報告されている。実際にトレンチ調査で得られた1回あたりの縦ずれ変位量は約1m程度となっており、仮にほぼ同量の横ずれ変位量を加味した場合には、1回あたりの変位量は1.4m程度となる。1回あたりの変位量を1−1.4mと仮定した場合、この変位量から松田(1975)の経験式を用いて得られる断層長は、12−18kmと計算される。八栄東地区以西の殿田断層と世木林地区付近の殿田断層において活動履歴に違いがある場合には、世木林地区の南方に位置する神吉断層や越畑断層との関連性を考慮する必要がある。

表4−1 殿田断層における八栄東地区と世木林地区の比較