(1)ボーリング調査

1)A測線

A測線では、空中写真判読や地表踏査の結果から、推定される断層位置より南側で、沖積堆積物が厚く堆積していると考えられた。このことから、断層を挟んだ5箇所で群列ボーリングを実施し、断層両側での堆積物の変化と断層による変位の有無を確認した。調査位置図は図3−52に示す。

@ ボーリング調査結果

各地点でのボーリング調査結果を下記に示す。なお、採取した試料より作成したボーリング柱状図とコア写真を、巻末試料として添付した。

 

TO−5

・0.00−0.90m

 暗茶褐色を呈する粘土および礫である。攪乱されていることと現在の地形状況から、地表部分を構成している埋土(盛土)と考えられる。

・0.90−1.35m

 黒茶色を呈する砂質粘土で、有機物を多く含んでいる。粘土中には、少量の植物片認められる。部分的に細礫を含有する。

・1.35−1.50m

 暗灰色を呈する砂礫で、有機物を含んでいる。含まれる礫径は、最大φ50mm程度である。

・1.50−1.65m

 黒灰色を呈する粘土で、有機物を含んでいる。上位より含水量が多く緩い状況である。

・1.65−1.90m

 暗褐灰色を呈する砂混じり粘土であり、少量の有機物を含んでいる。少量の細礫を含有する。含水量は少なく、よく締まっている。

・1.90−2.35m

 茶黒色を呈する有機質の粘土で、有機物や木片を多く含んでいる。上下層より有機物を多く含有しているため、全体が黒っぽく見える。含水量はやや少なく、比較的締まっている。

・2.35−2.80m

 灰褐色を呈する粘土である。含水量は少なく、非常に良く締まっている。砂や礫は、ほとんど含有しない。

・2.80−3.10m

 暗茶灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は多い。軟質な粘土を主体とするが、砂が多い部分は非常に緩くなっている。

・3.10−4.70m

 淡青灰色を呈する砂混じり粘土である。上位に比べて含水量が少なく、良く締まっている。3.70−4.10m,4.45m−4.70m付近には、細礫が含まれている。

・4.70−5.00m

 暗青灰色を呈する粘土混じり砂である。含水量は多く、やや緩い状況である。全体的に細礫を含有する。

・5.00−5.20m

 暗青灰色を呈する粘土混じり砂である。含水量は少なく、比較的良く締まっている。上位層と色調の違いが明瞭である。

・5.20−6.10m

 暗緑灰色を呈する粘土混じり砂である。含水量は多く、砂が主体となっている部分では非常に緩い。2−20mm程度の礫を多量に含有している。

・6.10−7.10m

 暗褐灰色〜淡灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、非常に良く締まっている。砂や礫は、ほとんど含有しない。

・7.10−8.25m

 淡青灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、非常に良く締まって硬質である。7.20−7.70m付近は砂が少なく、粘土が主体となる。

・8.25−8.90m

 淡緑灰色〜青灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、良く締まっている。上位の砂混じり粘土層と含水量は似ているが、色調が異なっている。8.25−8.45m付近に砂を多く含有している。

・8.90−9.35m

 灰色を呈する礫混じり砂である。含水量は少ない。最大でφ30mm程度の礫を、多量に含有している。

・9.35−10.80m

 淡緑灰色〜青灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、良く締まっている。まれに礫が含まれる。

・10.80−11.25m

 灰褐色を呈するシルト混じり砂である。含水量は少なく、非常に硬質である。全体的に細礫を含んでいるが、11.20m付近に礫を多く含有している。

・11.25−14.80m

 淡黄灰色〜青緑灰色を呈する泥岩である。部分的に風化が進んでおり、特に12.90−13.10m付近では、強風化のため粘土化している。14.00m以深は、若干破砕を受けており、青緑色を呈する部分が認められる。風化が比較的弱い部分では泥岩の組織が良好に残存しており、硬質である。

・14.80−16.00m

 黒灰色を呈する頁岩である。弱い破砕を受けて部分的に粘土化している。15.60−15.80m付近には亀裂が多く、粘土化した頁岩が葉片状に剥離する。

P−3

・0.00−1.10m

 暗茶褐色を呈する粘土および礫である。攪乱されていることと現在の地形状況から、地表部分を構成している埋土(盛土)と考えられる。

・1.10−1.40m

 黒灰色を呈する粘土で、有機物を多く含んでいる。植物片も多く認められることから、埋土が行われるまでの旧表土(耕作土)と思われる。

・1.40−1.70m

 茶黒色を呈する礫混じり粘土である。有機物を多く含んでおり、さらにφ10mm以下の礫を少量含有している。

・1.70−2.00m

 暗茶灰色を呈する砂である。含水量は少ないが、非常に良く締まっており、棒状の連続コアとなっている。砂は、中〜粗粒である。

・2.00−2.60m

 暗緑灰色〜茶褐色を呈する礫混じり粘土である。含水量が多く、緩い状態である。含まれる礫は、φ50mmm以下で、風化した頁岩やチャートが主体である。

・2.60−4.00m

 灰褐色を呈する粘土である。含水量は少なく、比較的締まった状態である。礫の含有量は少ない。

・4.00−4.80m

 褐灰色〜暗灰色を呈する礫混じり粘土である。含水量が多く、全体的に緩い状態である。比較的礫が多い部分と少ない部分が交互に堆積している。礫が多い部分は、φ30mm以下の礫を主体とする。

・4.80−5.00m

 暗青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。

P−4

・0.00−1.20m

 暗茶褐色を呈する粘土および礫である。攪乱されていることと現在の地形状況から、地表部分を構成している埋土(盛土)と考えられる。

・1.20−2.00m

 黒灰色を呈する粘土で、有機物を多く含んでいる。含水量がやや多く、比較的緩い状況である。植物片も多く認められることから、埋土が行われるまでの旧表土(耕作土)と思われる。

・2.00−3.40m

 茶灰色〜暗灰色を呈する粘土である。含水量がやや多く、比較的緩い状況である。2.00−2.30m付近と3.00−3.20m付近には、有機物が混入している。

・3.40−3.70m

 黒灰色を呈する礫混じり粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。有機質な粘土中に、φ10mm程度の礫が含まれている。

・3.70−3.80m

 黒灰色を呈する粘土で、有機物を多く含んでいる。含水量は少なく、良く締まった状態である。

・3.80−4.50m

 褐灰色〜暗灰色を呈する礫混じり粘土である。含水量が多く、全体的に緩い状態である。全体的にφ30mm以下の礫を含有している。

・4.50−5.00m

 淡灰色〜茶灰色を呈する粘土である。含水量はやや多く、比較的緩い状態である。10〜20cm程度の層厚で、淡灰色の粘土と茶灰色粘土が交互に堆積している。

P−5

・0.00−0.30m

 現在の水田土壌(耕作土)である。

・0.30−0.70m

 黒灰色を呈する粘土で、有機物を多く含んでいる。含水量がやや多く、比較的緩い状況である。少量の植物片を含有する。

・0.70−0.80m

 黒灰色を呈する有機質の粘土であり上位の部分と似ているが、この部分にはφ10mmm以下の礫を含んでいる。

・0.80−0.90m

 茶灰色を呈する礫混じり粘土である。上位より含水量は少なく、良く締まった状態である。有機質な粘土中に、φ20mm以下の礫が含まれている。

・0.90−1.90m

 褐灰色〜青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態であり、全体として棒状コアとなる。

・1.90−2.15m

 暗灰茶色を呈する礫混じり粘土である。上位の粘土に比べて含水量がやや多い。礫径は、φ20mm以下である。

・2.15−3.00m

 暗青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態であり、全体として棒状コアとなる。0.90−1.90mに分布する粘土と似ている。

・3.00−3.15m

 暗灰茶色を呈する礫混じり粘土である。上位の粘土に比べて含水量がやや多い。礫径は、φ20mm以下である。

・3.15−4.00m

 暗青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態であり、全体として棒状コアとなる。2.15−3.00mに分布する粘土と良く似ている。

・4.00−4.20m

 暗灰茶色を呈する礫混じり粘土である。上位の粘土に比べて含水量がやや多い。礫径は、φ30mm以下である。

・4.20−4.80m

暗青灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、比較的締まった状態である。粘土中に、少量の砂を含有している。

・4.80−5.00m

 暗灰茶色を呈する礫混じり粘土である。上位の砂混じり粘土に比べて含水量が多い。礫径は、φ20mm以下である。

P−6

・0.00−0.40m

 現在の水田土壌(耕作土)である。

・0.40−1.10m

 黒灰色を呈する粘土で、有機物を多く含んでいる。含水量がやや多く、比較的緩い状況である。少量の植物片を含有する。

・1.10−1.20m

 茶灰色を呈する有機質の粘土であり上位の部分と似ているが、この部分にはφ10mmm以下の礫を含んでいる。

・1.20−2.00m

 淡灰色〜茶灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。1.80−2.00m付近には、わずかに有機物が混入する。

・2.00−2.10m

 灰茶色を呈する礫混じり粘土である。上位の粘土に比べて含水量がやや多い。礫径は、φ20mm以下である。

・2.10−3.00m

 暗青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態であり、全体として棒状コアとなる。

・3.00−3.50m

 暗茶灰色を呈する礫混じり粘土である。上位の粘土に比べて含水量がやや多い。礫径は、φ30mm以下である。

・3.50−3.70m

暗青灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、比較的締まった状態である。粘土中に、多量の砂を含有している。

・3.70−4.30m

 暗青灰色を呈する粘土である。含水量が多く、緩い状態である。ごく少量の礫を含有している。

・4.30−4.70m

 暗灰茶色を呈する礫混じり粘土である。上位の砂混じり粘土に比べて含水量が多く、非常に緩い状態である。礫径は、φ20mm以下である。

・4.70−5.00m

 茶灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。粘土中に、少量の砂を含有している。

A 年代測定結果

A測線上のTO−5、P−4、P−5、P−6地点の沖積粘土層において、計14箇所から土壌試料を中心に採取し、14C年代の測定をおこなった。測定の結果を表3−5に示す。測定の結果、すべての試料から、約2600年前より新しい堆積物であることが判明した。ただし層準ごとに年代が並んでおらず(下位の層が最も古いわけではない)、最大で1000年ほどの逆転が生じている。個々の測定による年代値の信頼度は高いことから、

 

1) 耕作などによる影響により、表層土壌が乱されている。

2) 一度上流側で堆積した堆積物が流下し、当地点で再堆積した。

3) 地下水の影響で、炭質物が吸着した。

など複数の可能性が考えられる。

また、周辺の段丘形成年代を推定するために、TO−5地点の粘性土を主体とした段丘相当層から試料を採取し、火山灰年代の測定をおこなった。

試料の洗い出しの後、偏光顕微鏡で観察した結果、ガラス片を全く含まない試料が大半であり、ガラス片を微量に含む試料はbUのみであった。ただし、bUの試料はテフラとするほどガラス片を含む試料ではなかった。また、重鉱物に注目した場合、いずれも特定の鉱物が多いといった試料は見当たらなかった(表3−6)。

各試料のプレパラート写真を巻末資料に示す。

 

表3−5 TO−5地点 14C年代測定結果一覧

表3−6 曽根地区TO−5地点 火山灰年代測定結果一覧

B 調査結果の解釈

A測線上の調査の結果、TO−5地点では、周辺の既存調査資料(図3−53)からGL−11.25m以深に第三紀須知層および丹波層群が分布していることが確認された。その上位に認められる段丘相当層は、粘性土を主体とした細粒堆積物が8m強の層厚で分布する。さらに上位にはGL−3.10mまでの層厚約2.20mに有機質の沖積粘土層が認められた。このTO−5地点から北側にむかって実施した群列ボーリングでは、表層からGL−5.00mまでの掘削をおこなっているが、いずれの地点からも沖積粘土層下に粘性土を主体とする段丘相当層が認められた(図3−54)。空中写真判読や地表踏査で推定した断層位置の両側では、この沖積粘土層の分布が大きく異なっており、推定断層の北側P−5、P−6地点では、いずれもGL−1mほどで段丘相当層が認められる。この分布の変化を断層の変位と捉えるならば、推定される断層位置において、沖積粘土層に1mほど北上がりの変位が生じていることになる。ただし推定断層位置の南側のP−3地点では、沖積粘土層はGL−1.7mまでと浅く、その下位には段丘相当層のよく締まった砂層が堆積している。この地点は両側(TO−5、P−4)の沖積粘土層の分布と大きく異なることと、段丘相当層の上端に締まった砂層が認められることから、段丘の高まり(侵食の残り部分)であると考えられる。

図3−53 曽根地区周辺の地質状況

図3−54 曽根地区ボーリング結果及び断面図

2)B測線

B測線では、東方で確認される北上がりの低断層崖の延長上に、北上がりの段差地形が認められる地点である。この段差地形が、断層運動に伴うかどうかを確認する目的でボーリング調査を実施した。調査位置図は、図3−52に示す。

@ 調査結果

各地点でのボーリング調査結果を下記に示す。なお、採取した試料より作成したボーリング柱状図とコア写真を、巻末試料として添付した。

P−1

・0.00−0.40m

 現在の水田土壌(耕作土)である。

・0.40−1.00m

 茶褐色を呈し、φ20mm程度の礫と砂を含有する。含水量が比較的多く、やや緩い状態である。礫の基質部分には、粘土も多く含有する。

・1.00−1.50m

 茶灰色を呈する礫混じり粘土である。上位の粘土に比べて含水量少なく、良く締まっている。含有する礫は少量で、粒径はφ20mm以下である。

・1.50−2.20m

 淡青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。

・2.20−2.90m

 褐灰色を呈する砂混じり粘土である。含水量は少なく、よく締まっている。粘土中には砂も多く含まれており、まれにφ20mm以下の礫を含有する。

・2.90−4.00m

 暗青灰色を呈する礫混じり粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態であり、全体として棒状コアとなる。粘土中にφ20mm程度の礫を含有する。

・4.00−5.00m

 灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。上位の粘土とは違い、礫の含有は見られない。

P−2

・0.00−0.40m

 現在の水田土壌(耕作土)である。

・0.40−2.30m

 赤褐色〜褐灰色を呈する礫混じり粘土である。礫が多く含まれている部分では含水量がやや多く、比較的緩い状態である。粘土が主体となる部分では、含水量が少なく良く締まっている。含有する礫の粒径はφ20mm以下である。

・2.30−3.20m

 青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。

・3.20−3.60m

 青灰色を呈し、砂を主体として粘土を含んでいる。含水量は少なく、良く締まった状態である。

・3.60−3.90m

 暗青緑色を呈する礫混じり粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態であり、全体として棒状コアとなる。粘土中にφ20mm程度の礫を含有する。含まれる礫の中には、強風化して粘土化しているものも確認できる。

・3.90−4.80m

 暗青灰色を呈する粘土混じり砂礫である。含水量は少なく、良く締まった状態である。φ20mm以下の礫と砂を主体とするが、粘土も多く含有している。

・4.80−5.00m

 青灰色を呈する粘土である。含水量は少なく、良く締まった状態である。上位とは違い、砂礫の含有は見られない。

A 調査結果の解釈

B測線上の調査の結果、段差地形の両側の堆積物は、どちらも高位段丘に相当する粘土質な堆積物が認められた。しかし、段差地形の上下にあたるP−1,P−2ボーリングを比較すると、同様の堆積物が緩い北傾斜で分布していることが確認でき、断層運動に伴う垂直方向の変位は認められなかった(図3−55)。これらの結果から、当地点の段差地形の上下では、

1) 断層は通過していない。

2) 断層は通過しているが、高位段丘に変位を与えていない

(高位段丘堆積後に断層が活動していない)

という可能性が考えられる。ただし2) の可能性を考慮すると、当地点より東方に分布する低断層崖の存在と矛盾が生じることから、1) の断層通過位置ではないと考えられる。本ボーリング調査の結果と空中写真判読結果を加味して考えると、この付近での断層通過位置としては、P−1より南側を通過する可能性が高いと考えられる。

 

図3−55曽根地区ボーリング結果及びB断面図