(6)年代測定

14C年代

 ボーリング調査およびトレンチ調査で採取したサンプルの年代特定するために、14Cを用いた年代測定を行った。年代測定は、株式会社パレオラボで実施した。本調査で実施した調査数量は、表2−8のとおりである。

表2−8 14C年代分析数量表

@ 測定方法

14C年代の測定方法には、大きく分けて、β線計数法と加速器質量分析法(AMS)の2つがある。β線計数法は、炭素原子(の放射C)壊変で放出されるβ線を検出し、14C濃度を求める方法である。この方法ではある程度のβ線強度が必要となるため、炭素試料が数10〜100gほどが必要となる。それに対して加速器質量分析法(AMS)は、14C原子の質量を直接検出する方法である。この方法ではβ線計数法に比べ、より少量(1g程度)の試料で測定が可能であることから、試料の量が限られている場合(ボーリング柱状試料など)でも有効でもある。また、β線計数法が試料全体の平均値を取るのに対して、加速器質量分析法(AMS)では、試料の直接的な年代を求めることができる。

本調査では、八栄東地区のトレンチ調査と曽根地区のボーリング調査において14C年代の測定をおこなった。八栄東地区のトレンチ調査では、礫層または粘土層中に堆積している木片を採取した。木片などの試料は、大きさが小さく炭素試料が少量(10g以下)であったため、加速器質量分析法(AMS)で分析した。また、曽根地区のボーリング調査で得られた柱状試料も、主に有機質粘土であり、含まれている炭素試料が少量であったため、加速器質量分析法(AMS)を用いた測定をおこなった。

分析にあたって、試料は前処理に、106μmの篩分け、超音波煮沸洗浄、酸・アルカリ洗浄を施した後、加速器質量分析計を用いて測定した。得られた14C濃度について同位体分別効果の補正を行った後、14C年代、暦年代を算出した。

A補正方法

14C年代はAD1950年を基点にして何年前かを示した年代である。14C年代(yrBP)の算出には、14Cの半減期としてLibbyの半減期5568年を使用した。また、それぞれの結果に付記した14C年代誤差(±1σ)は、測定の統計誤差、標準偏差等に基づいて算出され、試料の14C年代がその14C年代誤差内に入る確率を示したものである。

 また、大気中の14C濃度が一定で半減期が5568年として算出された14C年代に対し、過去の宇宙線強度や地球磁場の変動による大気中の14C濃度の変動、及び半減期の違い(14Cの半減期5730±40年)を較正するために暦年代較正をおこなった。暦年代較正結果は、巻末資料に添付する。14C年代の暦年代較正にはOxCal3.9を使用した。なお、1σ暦年代範囲は、OxCalの確率法を使用して算出された14C年代誤差に相当する68.2%信頼限界の暦年代範囲であり、同様に2σ暦年代範囲は95.4%信頼限界の暦年代範囲である。カッコ内の百分率の値は、その範囲内に暦年代が入る確率を意味する。グラフ中の縦軸上の曲線は14C年代の確率分布を示し、二重曲線は暦年代較正曲線を示す。

・ 火山灰年代

各調査地点で堆積物の年代を推定するために、火山灰および火山灰が含まれている可能性がある堆積物(シルト・粘土)を対象に火山灰分析を実施した。分析を行った数量は表2−9のとおりであり、分析は株式会社パレオラボで実施した。

表2−9 火山灰分析数量表

@測定方法

本調査では、八栄東地区のトレンチ調査、曽根地区のボーリング調査、中台地区のピット調査からそれぞれ採取した試料を用いて分析をおこなった。八栄東地区のトレンチ調査と中台地区のピット調査からは、肉眼での観察から火山灰の混入が予想された試料を採取した。また曽根地区のボーリング調査では、段丘相当層の粘性土から、0.3−0.4m間隔で連続試料を採取した。

各試料は、代表的な部分から約5g程度を採取し、トールビーカーに入れ精製水を加えた。

超音波洗浄器を用いて分散した後、拡散した細粒分を遠沈管に回収した。

遠沈管に入れた試料は、10時間静止した後、アスピレータを用いてコロイド分を除去した。この作業を2回行った後、適宜スライドグラス上に展開してカバーグラスを被せて偏光顕微鏡で観察した。