5−2 亀岡断層の活動履歴について

P波反射法地震探査では基盤岩上面の断層変位やW層(大阪層群相当層)中の撓曲構造は認められたが,T〜V層(段丘堆積層相当層および沖積層)に断層変位や変形が及んでいるかどうか解像度の関係で判断できず,活動履歴に関する情報は得られていない。

そこで,地形面に現れている変位地形から活動履歴を推定した。保津町〜千歳町国分では,L1面に比高1.5〜3mのF2断層による撓曲崖が分布し,F2断層はL1面の形成時期以降すなわち約2万年前以降に活動したことが確実である。一方,馬路町付近のL1面とL2−2面(馬路)は山地側(東側)に逆傾斜し,それぞれの傾斜はL1面が0.28°,L2−2面が0.13°である。地下に分布する断層との対応は明らかではないが,@F1断層の山側にのみ段丘面が発達すること,AL1面とL2−2面の分布が断層の伸張方向と一致し,その背後側に閉塞低地を伴うこと,B反射法地震探査による地下地質構造に類似した地形面(馬路町のL1面,L2−2面)の傾動が認められること,などから,これらの地形面の逆傾斜は「盆地内の亀岡断層」の活動による可能性がある。L1面の逆傾斜が断層活動による傾動であることはほぼ確かであるが,L2−2面の逆傾斜が断層活動による傾動である可能性はやや信頼性が低い。これら変動地形の分布とその解釈から,亀岡断層の活動履歴について,以下の3つの解釈が考えられる。

a) 活動履歴解釈@

亀岡断層はL1面の形成時期以降すなわち約2万年前以降に1回以上活動したが,それ以前の活動履歴は不明である。

b) 活動履歴解釈A

馬路地点のL1面とL2−2面の傾動から,「盆地内の亀岡断層」の最新活動時期はL2−2面形成時期以降すなわち約3,700年前以降である。一つ前の活動はL1面の形成時期以降で,L2−2面形成時期以前すなわち3,700年前以降−20,000年前以前である可能性がある。

c) 活動履歴解釈B

保津地点において,L1面(約20ka)の変位量が約2m,AT火山灰(26−29ka)の変位量が約1.5mである。誤差を考慮すると,L1面とAT火山灰の変位量は同程度と見なせる。

亀岡断層はL1面の離水時期すなわち約20,000年前以降に1回以上活動し,20,000年前から26,000(〜29,000)年前の間に断層活動がなかった可能性がある。