(3)V層

V層は層相から上部のV−1層と下部のV−2層に細分した。

a) V−1層

V−1層は緩い粗粒砂や礫混じり粗粒砂,中礫,大礫混じり中礫など様々層相の地層が混在する。KA−1孔とKA−2孔では含まれる礫が円〜亜円礫が主体という特徴があり,層相の対比が可能である。一方,KA−3孔では亜角礫主体であるが,所々に亜円礫を混入することと,特徴的な“緩い砂”やシルトを挟むことからV−1層に対比した。KA−1孔とKA−2孔付近では円〜亜円礫を多く含むことから,大部分は河川成堆積物であると考えられ,山地に近いKA−3孔付近では扇状地性堆積物が主体で河川成堆積物が挟在していると考えられる。

V−1層の層厚は8〜9m程度である。

V−1層から地層の形成年代を推定する分析結果が得られなかった。ただし,火山灰分析の結果,KA−2孔のGL−14.0〜19.3mでBT−21火山灰起源と考えられる斜方輝石や角閃石などの再堆積粒子を多く産出した。BT−21火山灰の降灰層準は下位のV−2層で確認しているが,V−1層の形成年代はBT−21火山灰の降灰以降あまり年代が経過していない可能性がある。

b) V−2層

V−2層は主に大礫混じり中礫からなり,KA−1孔では細礫や中礫など相対的に細粒な堆積物が挟まれる。礫は亜角〜角礫が主体で大部分が扇状地性堆積物であると考えられる。

KA−3孔のGL−32.5mに層厚2cmのK−Tz火山灰層を確認したほか,KA−1孔のGL−32.6mにK−Tz火山灰の降灰層準を確認した。また,KA−2孔のGL−23.5mにBT−21火山灰の降灰層準を確認した。BT−21火山灰は琵琶湖高島沖コアのAso−4火山灰とSI火山灰の間に挟まれる斜方輝石と角閃石を主体とする火山灰である(吉川・井内,1991)が,降灰年代に関する調査研究がなされていない。本調査ではBT−21火山灰の年代を3章の図3−3−3を参考に約80kaと仮定してとりあつかう。

KA−3孔のGL−32.6mの試料ではスギ属が卓越し,コウヤマキ属とイチイ科−イヌガヤ科−ヒノキ科を高率に伴う花粉化石組成が得られ,Furutani(1989)によるP2帯に対比できる。この対比はK−Tz火山灰の層準と年代的に一致する。

V−2層はK−Tz火山灰(95ka),BT−21火山灰(80ka?)を含むことから,中位段丘堆積層に相当すると考えられる。