(3)P3ピット(L2−1面,L=0.95m)

P3ピットは馬路町東方のL2−1面(馬路)で調査した。当地点では遺跡調査の試掘がなされており,その試掘跡の壁面を観察,試料採取した。調査深度は0.95mである。

a) 層相

P3ピットの地質は深度0.00〜0.15mは耕土,深度0.15〜0.45mは腐植質シルトおよび細粒砂,深度0.45〜0.95mは中礫からなるL2−1面(馬路)構成層である。(図3−4−9

深度0.15m〜0.45mの腐植質シルトおよび細粒砂は,@下位の地層とは層序的に不連続であること,A層厚が20〜30cm程度と薄く,地形面を形成するような地層であると考えにくいこと,B下位の地層が赤褐色の酸化色を呈していることから,P3ピットの深度0.15〜0.45mの地層はL2−1面(馬路)構成層を覆うさらに新しい地層であると考えられる。

b) 火山灰分析

P3ピットでは耕土以深で10cm毎に試料を採取し,火山灰分析を実施した(図3−4−9)。

深度0.3mで火山ガラス含有量のピークが出現する。火山ガラスは3,000粒子中40粒子以上であり,火山ガラスの形態はバブルウォールタイプのものが優占する。火山ガラスの屈折率は1.497〜1.502(モード1.498〜1.500)と1.507〜1.513(モード1.508〜1.510)とバイモーダルで,斜方輝石の屈折率は1.702〜1.711(モード1.705〜1.707)である。火山ガラスの形態や屈折率からK−Ah火山灰とAT火山灰が含まれると考えられるが,斜方輝石の屈折率はK−Ah火山灰のみの値を示す。よって,火山ガラス含有量が急増する深度0.3mをK−Ah火山灰の降灰層準と判断した。

c) 14C年代測定

P3ピットでは深度0.25mの腐植質シルトで14C年代測定を実施した。補正14C年代値は5,779±71(yBP)である(図3−4−9表3−4−1)。

d) 層序

P3ピットではL2−1面(馬路)構成層とみられる深度0.45m以深で地層の形成年代を示す資料は得られなかった。L2−1面(馬路)構成層を覆う地層では火山灰分析により約7,300年前のK−Ah火山灰の降灰層準を深度0.3mで確認し,14C年代測定により深度0.25mで約5,800年前の年代値を示した。

L2−1面(馬路)構成層の形成年代はK−Ah火山灰の降灰時期以前すなわち約7,300年前以前であると考えられる。