(4)静補正

静補正は、標高差や速度的および空間的に変化の大きい表層の影響を取り除く処理で、地表の発震点や受震点を、風化層等の低速度部が偏在しない基準面(一般的には平面)に見かけ上並べる、タイムシフトや標高シフトの処理である。これにより、共通発震点ギャザー(発震点を共通とするトレースの集まり、現場での収録データ)やCMPアンサンブル内での反射波の連続性を向上させ、以下に示す波形処理の効果を向上させることが可能となる。静補正は、表層付近に偏在する風化層の層厚や速度の変化の影響を補正する表層静補正、発震点や受震点の標高が異なる影響を補正する標高静補正を行う必要がある。静補正の概念を図3−2−12に示す。

静補正は、初動走時の読み取り、これを入力データとする屈折法地震探査の解析を行い、風化層と下位層の速度および風化層の層厚を求め、表層静補正量や標高静補正量を算出した。

通常の屈折法地震探査の解析では、地下の構造を速度層に区分し、表層から1層毎にはぎ取る「萩原の方法」等が多用されるが、特にミラージ的な速度分布を示す地下構造(深度方向にステップ状に速度が増すのではなく、深度と共に漸次的に速度が増す地下構造)では、必ずしも精度の高い静補正量が得られるとは限らない。そこで、「屈折波を用いたトモグラフィ」により表層の速度分布を求め、これにより静補正量を算出し、表層に起因する乱れを補正した。屈折波を用いたトモグラフィの解析手順を以下に示すと共に、屈折波トモグラフィの解析フローを図3−2−13、解析結果を図3−2−14図3−2−15に示す。

@ 観測波形よりP波初動走時を読み取る。

A 初期速度モデルを作成する。

B 速度モデルと差分法(Vidale法)を用いて初動走時を計算する。

C 計算初動走時を観測初動走時、あるいは前回の計算初動走時と比較し、収束判定を行う。収束と判定した場合には現在の速度モデルを最終解析結果とし、解析を終える。

D 計算初動走時を基に初動の波線(発震点と受震点を結ぶ波動の伝播経路のうち、初動を示すもの)を求める。

E 計算初動走時と観測初動走時の差、および波線を基に速度モデルの修正を行う。速度モデルの修正は計算初動走時と観測初動走時の比により波線近傍の速度を修正する方法を用いる。

F ステップBへ戻る。