(2)分析結果

顕微鏡で検出した火山灰起源のガラスや有色鉱物の屈折率、形状などから広域指標火山灰と比較、検討して、対比を行った。本調査では、肉眼で識別できる純層の火山灰は産出せず、すべて礫層の細粒部(基質)を分析試料としている。深度

35m以浅のコア試料で、荒い間隔で分析を行い、火山灰起源のガラスや鉱物の産出があれば、その周辺をより細かな間隔で試料採取して、追加分析を行った。図3−6−1はそれらを図に示したものである。全体に産出した火山灰起源の粒子は大変少ない。図下段欄外に示されるように、15000粒子中5粒子以下の火山灰起源のものがあれば+印を、それ以上のものは5000粒子中の個数でその存在を表示し、測定可能なものについては、屈折率を測定している。

今回の調査で識別対比した火山灰はいずれも@その量が少量であること、Aその存在が上下方向で散在的で、分布の密集が認められないことから、火山から降灰し、堆積した純層に属するものではなく、再堆積したものであると解釈される。従って、各火山灰を検出した地層の堆積年代は、文献で記載されている降灰時期より新しい時期である。

(1) 姶良−Tn火山灰(AT)と鬼界アカホヤ火山灰(Ah)の共存

南九州から飛来した25−28ka(kaは千年前)の姶良−Tn火山灰(AT)と7.3kaの鬼界アカホヤ火山灰(Ah)が共存して、深度11.8m(標高84.0m)以浅の試料から現れる。この深度以深の試料に両者は全く現れないことから、深度11.8m以浅は、鬼界アカホヤ火山灰降灰時(7.3ka)以降の地層(堆積物)である。U層上部やT層中に降灰した姶良−Tn火山灰(AT)やアカホヤ火山灰(Ah)は共に、その後の浸食で流出、消滅したと推定できる。姶良−Tn火山灰(AT)からアカホヤ火山灰(Ah)までの地層が浸食されていることから、T層基底は深度11.8m付近にあり、T層とU層との関係は不整合であることが示された。

(2)鬼界葛原火山灰(K−Tz)

約9.5kaに飛来した鬼界葛原火山灰(K−Tz)が深度32.6m(標高63.2m)で検出された。この上下のコア試料から鬼界葛原火山灰(K−Tz)を特徴づける高温型石英の検出がないことから、この深度は、ほぼ降灰層準を示すものと判断した。

(3)大山系火山灰(DSP)

深度9.9〜10.5m(標高85.9〜85.3m)に有色の斜方輝石と角閃石を特徴する火山灰を検出した。組成の組み合わせや鉱物の屈折率から大山系火山灰(DSP)に酷似する。この火山灰はおおよそ5〜8万年前頃に噴出したことが確かめられている(42,43)。従って、検出した火山灰は断層上盤側から、二次的に再堆積したと解釈した。

この火山灰の下位から時代の若いAT+Ah火山灰が産出すること、それらはATやAhの特徴を備え、確かであることから、再堆積した、AT+Ah降灰時期である0.75万年以降の新しい地層である。

(4)加久藤火山灰(Kkt)

追加分析を行った試料の内、深度110.2m(標高−14.4m)に南九州から飛来した加久藤火山灰(Kkt)を検出した.