(2)地層分布

(1)基盤岩と堆積物

深度断面図の下部と上部で、反射面の形態に明瞭な差違がある。下部では不規則な波状で,途切れ途切れの細い反射面が卓越する。一方、上部では平行で、やや太く長く連続する反射面が卓越する。このような反射面の特徴から、下部には丹波帯中・古生層あるいは花崗岩からなる基盤岩が、上部には地表と平行な層状を示す堆積物が分布していると解釈される。両者の境界は反射面Eとしている。

(2)P波速度分布

表層付近のP波速度1400m/sの領域は、ボーリング結果を参考にすると、完新世の未固結の礫層と推定される。その下位のP波速度2000m/s未満の領域は,更新世後期の段丘堆積物相当と推定される。基盤岩までのP波速度2000〜2300m/sの領域は,更新世前期−中期の大阪層群相当の堆積物と推定される。この内,P波速度2000+m/sの領域のものと、2200〜2300+m/sの領域のものとが識別される。速度分布から前者は粘土質優勢、後者は砂・礫質優勢の堆積物と判断される。全体として下位の堆積物ほど強く圧密されて、密度が大きくなり,P波速度も増加する(図3−4−23)。

(3)基盤岩上面(反射面E)の分布

基盤岩上面は測線両側で浅くなり、CMP400付近で最深となる凹地状の構造を示す。図左側の西端付近で基盤岩上面の標高は−200mである。東側に向かって非常に緩やかに傾斜する.この内,CMP150〜400までの長さ600m間では、傾斜角 5度とやや急な傾斜を示す。CMP400で標高は−280mの最深となり、ここでF1断層にその分布が、断たれる。

F1断層の上盤側のCMP460付近で、基盤岩上面の標高は−110mまで相対的に上昇し、それから東側のCMP540付近に向かって、再び5〜10度で傾斜する。CMP540付近から東側のCMP720付近に小さな凸部、CMP750〜870区間に底の浅い盆状構造があるが,東端付近の標高130mまで全体として緩く傾斜しながら浅くなり、測線東側延長の山地の丹波帯中・古生層に繋がる。CMP1000付近から東側では、その西側に比べ著しく反射面が不明瞭で複雑となる。複雑な地質構造が推定される.基盤岩上面の反射面は複数の断層(F3断層群)で切られて、基盤岩上面の正確な分布は分からなくなる。

(4)堆積物の分布

基盤岩を覆う堆積物の層厚は、山側に近接したところで最小の20〜30mであるが、その西方では直ぐに層厚は200mを越え、最大で400m弱を示す。

(a)反射面Aと反射面A−Bの堆積物の分布

反射面Aは測線西端からCMP1070付近まで追跡できる地表近くの顕著な反射面である。地表から深度15〜20mを地表に平行に分布するが、東側の山麓に近づくと深度40mとなり、地表と反射面Aとの間の地層の層厚が増加する。山麓CMP1000付近以東では、反射面Aが消失している。反射面Aは、ボーリング調査などから西側では盆地低地の水田地下に分布する沖積層基底付近に相当すると思われる。河原林町から山麓では、反射面Aは、扇状地堆積物の基底付近に相当すると思われるが、反射断面からその詳細は分からない。一方,表層の屈折波から推定された表層構造(図3−4−22)では,F2,F3断層帯付近を境に,3つの異なる表層構造が示唆されている.図ではF1断層上下盤でこのような表層構造の差異は顕在化していない.このような表層構造の差異が,新旧の扇状地層を反映したものか,断層の影響なのか,今後の検討が必要である.

反射面A−B間は反射面の特徴から、礫層が卓越するものと思われる。F1断層の下盤側で堆積物の厚さは100m、上盤側の頂部で40mを示す。F2断層帯の下盤側では70〜80m程度であるが、上盤側では不明瞭ながら60m程度の層厚が,判読できる。F3断層付近では反射面Bが同定できないので、その層厚は確定できない。

(b)反射面Bと反射面B−Cの堆積物分布

反射面Bは測線西端からCMP700付近まで追跡できる。それ以東については不明瞭となって追跡できない。反射面Bから反射面C間は、反射面が少ないことから、均質な堆積物が想定できる。F1断層の下盤側でその層厚は約100mである。上盤側でその層厚は約半分の50mとなる。F2断層帯の下盤側付近では、層厚60mであるが、上盤側では、反射面Bが不明瞭なこともあるが、層厚は70m程度以上と厚くなることが予想される。

(c)反射面C−Dの堆積物の分布

反射面C,Dはセットとして、測線西端からCMP900付近まで追跡できる。両反射面はほぼ並行で、F1断層の下盤側で、僅かに両者の間が広がるが、他では、それほど顕著ではない。反射面C,D合わさって、F1断層の上盤側やF2断層帯の上盤側頂部付近から東に傾く構造を明瞭に示している。

(d)反射面Dの分布

最下位で認められる反射面Dは、測線西端からCMP950付近まで追跡できる。基盤岩上面から反射面Dまでの地層の層厚を見ると、F1断層の下盤側とF2断層帯の下盤側で、共に厚くなっている。前者の堆積物はF1断層で切られていることは明白であるが、後者では、堆積物はアバット状に上盤側の基盤岩を被覆する。一方、F1断層の上盤側頂部での基盤岩上面からD反射面までの層厚は30mと下盤側での層厚100mの1/3にまで、激減する。F2断層帯の上盤側の頂部でも同様に地層は薄くなっている。