8 総合評価および結論

平成7年度の「京都府活断層調査」の報告から、想定される震源断層のマグニチュードは以下の表の様な値が得られる。解析に使用した式は、内陸型地震に適応される松田(1975)の式(logL=0.6M−2.9)と大塚(1965)の式(logL=0.5M−1.8)を用い、亀岡盆地とその周辺地域に分布する活断層についてマグニチュードを求めた。

この値は震源断層の長さや地表面に現れる断層の長さ(L)により、決定される。

 断層の長さに関して、亀岡断層は老ノ坂から船井郡八木町船枝まで約20q。神吉・越畑断層は神吉盆地と越畑盆地との境、廻り田池付近で活断層の走向や変位様式が異なるので、廻り田池から京都市嵯峨まで約10q、廻り田池から神吉盆地を通過し、殿田断層に連続する日吉町志和賀まで約16q、廻り田池から日吉町志和賀を通過し、瑞穂町豊田付近まで25q、神吉・越畑断層から殿田断層全域を35qとし、それぞれの解析を行った。表8−1

 以上のように、亀岡断層についてはM6.2〜7.0を示し、神吉・越畑断層と殿田断層についてはM5.6〜7.4まで、幅広い値が得られた。

 ○亀岡断層

 亀岡断層は京都市と亀岡市の境である、老ノ坂峠から船井郡八木町船枝まで、約20q程度連続し、走向は北西から西北西を示す、東側隆起の逆断層である。ボーリング調査や2ヶ所のトレンチ調査からは変位量や最新活動時期について確定的なデータは得られなかった。これは、基盤深度の関係や、ボーリング調査から得られた平均変位速度4cm/千年という、小さな値によるものなのか、表層に近い部分では活断層による地層の切断は認められず、もっと広い範囲で撓曲として変位しているのか、原因については幾つかのことが考えられる。これらの原因を解釈するためには更なる調査が必要である。

○神吉・越畑断層(殿田断層)

神吉・越畑断層はその中央部である、廻り田池付近で走向や変位様式が変化するので、南側の越畑地区と北側の神吉から殿田断層に連続する範囲で、二つに分けてまとめる。

越畑に分布する断層は、その南側延長は京都市右京区嵯峨に連続する、長さ約10q、越畑付近では走向は南北を示し、東側隆起の逆断層を示す。嵯峨付近では走向を北西−南東方向を示し、左横ずれを示すようになる。越畑の樒原付近では河谷中に断層露頭が認められたが、それは累積性を示すものではなく、全体の変位を把握するには至らなかった。付近の赤く風化の進んだ砂礫層から構成される撓曲崖は、水準測量から約20mの変位量が認められた。越畑盆地を構成する砂礫層の中に約8万年前に噴出した大山生竹テフラが確認されていること、テフラを含む砂礫は赤くなく、風化が進んでないことから、赤く風化した撓曲崖を構成する砂礫は約12万年前に堆積したものと推定すると、当撓曲崖の平均変位量は約17cm/千年となり、B級低位の活動度を示す値が得られる。

 神吉盆地から北方に連続し、殿田断層に合流した場合については、それぞれの活断層の走向は北西から西北西を示すこと、左横ずれが顕著なことから一連の断層群と認められる。しかし、明瞭な低断層崖が極端に少なく、活断層の活動範囲はマグニチュードを解析した場合と同様、幾通りかの範囲が考えられる。船井郡八木町神吉地内で実施された、ボーリング調査及びトレンチ調査からは表層を切るような明瞭な活断層は認められなかったが、基盤深度の標高差からはテクトニックな運動が示唆され、トレンチ断面からも、いくつかの断層運動から解釈される、堆積構造が認められた。以上のことから、平均変位速度は8〜12cm/千年が求められ、活動度はB級低位からC級であることが推定された。

 平成7年度京都府活断層調査において取りまとめられた京都府活構造図および国土地理院発行の都市圏活断層図のなかで、活断層の存在が確実とされる箇所においてトレンチ掘削調査を実施したにもかかわらず、表層を明瞭に変位さす活断層の発見には至らなかった。

 活断層の存在が確実とされていた箇所には段差が見られるが、これは河川の浸食、人工的な農地の改良等によって形成されたものと考えられ、活断層によって直接形成されたものではなかった。亀岡盆地及び神吉盆地にて、最新活動時期や変位量を求めるために、一番適切である場所について調査したものの、盆地全体の大きな構造は確認されたが、それぞれの活断層に関する充分な結果を得るには至らなかった。よって、当地域における、ボーリング調査やトレンチ調査だけでは全貌を把握するには不十分であり、更なる調査が必要である。