6−2 ボーリング調査結果

トレンチ掘削調査では分からない、活断層のより深部での変位量を求めるために、断層と思われる場所を挟んで2本のボーリング調査を千歳町江島里区と船井郡八木町神吉で実施した(図6−1)。ボーリングコア資料中の薄い火山灰層が鍵層になるため、それぞれオールコアで試料を採取し、火山灰、花粉、放射性炭素年代測定を実施し、それぞれのボーリングにおける同時堆積面の対比を行った。

 ボーリング数量は以下のとおりである。

亀岡断層:亀岡市千歳町江島里区内(図6−2)において、相対的隆起側に40m(ボーリングNo.B8(カ)−1)と相対的沈降側に42m(ボーリングNo.B8(カ)−2)を行い、それぞれのコア試料を対比した。

神吉・越畑断層:船井郡八木町神吉地内(図6−4)において相対的隆起側に20m(ボーリングNo.B8(ヤ)−1)と相対的沈降側に70m(ボーリングNo.B8(ヤ)−2)を行い、それぞれのコア試料を対比した。

○亀岡断層:ボーリング試料記載を表6−1表6−2に示し、巻末にコア写真と柱状図を示す。 断層を挟む2本のボーリング試料を対比した(図6−3)。

これら2本のボーリングコア試料からは年代を決定できるような、植物片を得ることはできなかった。これらのコア試料は基本的に扇状地堆積物と低位段丘礫層からなり、それら両堆積物は似かよった堆積相を示しているので、コア資料の同時堆積面を見分けるのは、非常に困難である。よって、唯一、鍵層となるのは試料中に含まれる火山灰の対比のみにおいてしか、考慮できない。

B8(カ)−1にはGL−10.0m・20.0m・25.95m・31.0mに火山ガラスを含んでいることが、コア観察から認められた。また、B8(カ)−2にはGL−10.0m・24.08m・33.37mにも火山ガラスを含んでいることが、コア観察から認められた。よって、両コアの火山灰の同定を行うと共に、花粉によるクロスチェックを行うために、花粉分析の分析も行った。

 火山灰分析の結果は両コアにおいて、GL−10.m付近は2.5万年前に噴出した姶良Tn火山灰であることが確定した他は、7〜9万年前に噴出した阿蘇4テフラや7.5万年前に噴出した鬼界葛原テフラ等認められたが、2次的に堆積した可能性が強いため、対比には使用できなかった。

 花粉分析の結果はアカガシ亜属やスギ及びマツ属の花粉が極微量検出されたが他の試料については抽出できなかったため、堆積層の同定を行うことはできなかった。

 単純に考えて姶良Tn火山灰は地表の比高1m分だけ変位しているように考えられるが、自然傾斜を考慮するなら、充分自然傾斜のほうが自然であると考えられる。よって、変位したとしても、約2万年で1mの変位を考慮するなら、平均変位速度は4cm/千年となり、活動度はC級となる。

○神吉・越畑断層:ボーリング試料記載を表6−3表6−4に示し、巻末にコア写真と柱状図を示す。 断層を挟む2本のボーリング資料を対比した(図6−5)。B8(ヤ)−1とB8(ヤ)−2のボーリング調査によって、基盤深度を求めた。相対的隆起側(B8(ヤ)−1)でGL−6.2m、相対的沈降側(B8(ヤ)−2)でGL−66.7mで、丹波帯の強風化を受けた、頁岩と砂岩が認められた。以上のことから基盤落差は約60mが確認され、この2本のボーリング間隔は20m足らずであることを考慮すると、自然傾斜よりもテクトニック的な断層運動を考える方が自然である。また、これらのボーリングコア試料からも数層の薄い火山灰と木片及び花粉が含まれており、それぞれについて分析した結果を以下に示す。

B8(ヤ)−1

年代測定 :年代測定は試料中に含まれていた、3つ木片を分析し、GL−0.86mで31740±310、GL−3.4mで41130±850、GL−5.6mで48030以上の値が得られた。

火山灰分析:GL−5m付近で8万年前に噴出した大山生竹テフラが認められた。

・B8(ヤ)−2

火山灰分析:GL−8.8m・11.22m・11.62m・18.62mにおいて2次的な堆積物中に含まれる大山系らしいテフラが認められた。また、GL−43.95mには大阪層群の鍵層にもなっているサクラテフラが2次的と思われる堆層中に認められ、さらに、その下部のGL−47.3mには大山系らしいテフラが認められた。

花粉分析:12試料の分析によって、花粉の構成から大まかな寒暖が認められた。特に、GL−43.6mや48m付近では大阪層群のMa9に対比されることが認められた。

 以上のことから総合的に判断すると、相対的隆起側のB8(ヤ)−1には完新世を示すような堆積物はほとんど含まれておらず、さらに5万年以上も前の堆積物も残っていない。よって、同時堆積面を考慮する上で、丹波層群の基盤岩以外明瞭な対比はできない。しかし、不確定ではあるが、GL−11.62mの大山系テフラを8万年前に噴出した、大山生竹テフラとするならば両コア試料について対比することができる。ただ、AT(姶良TNテフラ)についてはトレンチ調査結果から便宜上データを掲載しており、おおよそ、ATについては標高差4.6mが推定される。さらに、サクラテフラが相対的沈降側においてGL−44m付近に確認されていることから、この基盤深度の標高差が断層活動によって形成されたと考えると、8〜12cm/千年の平均変位量が求められ、活動度はB級の下位からC級であることが認められる。