3−4−1 調査概要

トレンチ調査は、空中写真判読、地質踏査、ボーリング調査、物理探査等により推定した断層位置を実際に掘削し、第四紀後期、特に沖積世における断層運動や最近の変動量等 を把握し、断層の評価を行い、可能ならば最新の地震発生時期を把握して、今後の地震の予知のための基礎資料を得るために実施した。

トレンチ実施地点は沖積層が厚く、多くの年代が把握しやすい地層で、かつイベントの観察が可能な地点が望ましい。一般に、小流域の小沢の出口付近や沖積平野あるいは山脚 部等が選ばれている。トレンチ実施位置を決定するために、広域から詳細な範囲(独鈷山地区、熊本城地区、麻生田地区)の各種調査を進めてきた。表3−4−1 にその比較を示す。

沖積地が対象である独鈷山地区は、アカホヤ層の分布深度が約 5mもあり、厚い軟弱な地層とともに掘削上の問題から、トレンチ候補地点からはずした。

Aso−4 火砕流台地にある熊本城地区は、用地の制約に加えて、土地改変のため上部の堆積物が欠落している可能性が指摘され、トレンチ候補地点からはずした。

河成段丘にある麻生田地区は、最新の活動時期を検討する堆積物が欠如している可能性 および人家にやや近接しているきらいはあるが、トレンチ地点として選ばれた。

麻生田地区は熊本市清水町麻生田にあり、現在畑および竹林あるいは雑木林となっており、周囲はやや住宅地が密集している(図3−4−1)。

トレンチの規模は当初長さ 約 20 m、幅 約3.3 m(法勾配 1:0.3)、深さ 約 3.0 mであった。掘削はミニユンボで表土の削剥・保存後、ユンボにより掘削した。掘削土はトレンチ脇に積み上げた。植物根、特にタケの根は人力により取り除き、焼却した。掘削は砂礫 部、タケの根を除けば、比較的容易であった。法面の整形は人力によった。最初の掘削(11 月初旬(6〜10 日))では断層は認められず、さらにトレンチの延びの方向に延長した。

再度の掘削は 11 月下旬(27〜30 日)に行った。前回以上にタケの根は繁茂し、掘削は困難であった。前回と同様に植物根は人力により取り除き、焼却した。また、法面の整形も人力によった。掘削延長は最終的に長さ約 28 m、幅 約 3.3〜4.4 m、深さ 約 3.0〜6.0 mとなった(写真3−4−1)。

しかし、断層は認められなかった。

主要使用機材は、1 回目の掘削ではミニユンボとユンボ(SK 045)をそれぞれ1台ずつ を、2 度目の掘削ではユンボ(SK 045 と SK 120)をそれぞれ 1台ずつ使用した。

主要使用機材

ミニユンボ   ヤンマー製   1 台

ユンボ(SK045)  KOBELCO 製   2 台

ユンボ(SK120)  KOBELCO 製  1 台

表3−4−1 トレンチ地区の比較