(2)地質概説

調査地域の地質については、図3−1−6−1図3−1−6−2図3−1−6−3図3−1−6−4図3−1−6−5図3−1−6−6、 地質平面図として整理した。

先第四系は調査地東部、九州自動車道の東方、小山山(標高 190 m)、神園山(183 m)および戸島山(133 m)等の小山地に島状に分布する中生代白亜紀の砂岩、礫岩、頁岩等からなる(写真3−1−13)。神園山の東では、走向 NW−SE、傾斜 15〜20°の砂泥互層からなり、一部に礫岩を挟む。合志町の南部の群山(145m)や飯高山(125 m)にも、これと同時代と考えられる岩石が分布する。これらよりさらに古期の岩石は結晶片岩(三郡変成岩類)で、金峰山北方の国見山(389 m)、金比羅山(264 m)等の山地に分布する。

基盤岩類の上部は、安山岩溶岩および同質の凝灰角礫岩を主体とし、一部凝灰岩を混える金峰山火山岩類からなり、調査地域西部の金峰山火山を噴出源としている。金峰山火山はカルデラを形成しており、本調査地域はその外輪山外縁(南斜面〜東斜面)に相当する。

これら基盤岩類および金峰山火山岩類の上位には、不整合で阿蘇火山を起源とする Aso−1〜4 にわたる火砕流堆積物が分布する。調査地域の地表部で主に確認されるのは、Aso−3 および Aso−4 火砕流堆積物である。Aso−3 火砕流堆積物は坪井川上流部(調査地域北部)の右岸側および立田山山地の東に開いた谷部から緩傾斜部に張り付くように分布している。これらは、発泡したスコリア・軽石・黒曜石等を含む火砕流堆積物である。

一方、Aso−4 火砕流堆積物は先に述べた金峰山外輪山の東側山腹斜面から坪井川に至る範囲に帯状(外輪山を取り囲んで)に分布するが、南側では沖積層に覆われるため、地表部には分布しない。Aso−4 火砕流堆積物は、軽石流堆積物を主体とし、台地ないしは丘陵地を形成している。

上記 Aso−1〜4 火砕流堆積物の上位には、託麻砂礫層と呼ばれる安山岩の円礫を主体とする砂礫層が不整合にこれらを覆って分布する。本調査域では、坪井川よりも東部の立田山周辺および白川を挟んでその対岸部に広く分布する。これら託麻砂礫層は、Aso−4 火砕流の堆積後、それほど時間間隙を持たない時代の堆積物と考えられている。また、本来は段丘面を形成しているものの、複雑で活発な小規模河川の生成と消滅による影響を受けて小規模な起伏に富んでいる。

託麻砂礫層は、立田山南東を流下する白川の下刻を受けて明瞭な旧河道(浸食崖)を形成している。下刻作用が活発な時代には、蛇行を繰り返したものと類推され、旧河道の幅は約 1 km に達する。これら旧河道は保田窪砂礫層と呼ばれる、安山岩の円礫を多量に含む砂礫層によって覆われており、立田山南東部では、白川旧河道の凹地底面に明瞭な段丘面を形成している。

調査地全域にローム層(褐色ローム〜黒ボク等からなる)が覆っている。ローム層中には姶良火山灰やアカホヤ火山灰が薄く分布する。

白川下流部から島原湾にかけて、粘土を主体とする有明粘土層が分布する。この有明粘土層は地表下に分布し、ボーリング調査によってのみ確認される。

調査地域の中央部は、熊本市市街地が広がり、白川・坪井川・井芹川が集まる低地を形成し、広く沖積層に覆われている。

調査地域の構造としては、本調査の目的でもある、立田山断層が調査地域北東部の楠五丁目から立田山北西縁−熊本城北側−花岡山北縁−独鈷山北縁−城山北縁−御坊山北側さらに白川河川敷にかけて南西方向に走っている。しかしながら、沖積低地部における分布(位置)は直接確認できない。