(2)リニアメント

リニアメントの区分基準は、表2−1−1 に基づいて行った。判読結果は、図3−1−2−1図3−1−2−2図3−1−2−3 に示した。判読内容を表3−1−5 に整理した。

調査地には断続的であるが、連続性が追跡され、延長約 15 km のリニアメントが認められる。途中所々で不鮮明となりながら、熊本市街北部の立田山地の北側から西側を取り囲むようにほぼ南西下し、熊本城を経て、花岡山・万日山北側、独鈷山、城山さらに御坊山に至る、リニアメントが認められる。それぞれのリニアメントと確実度のランクは下記のとおりである。

(1) 麻生田付近   ランク:LB

武蔵ヶ丘から西側に拡がっている託麻高位面(M1 面)に、麻生田の東付近から東西方向の崖が連続するのが認められる。託麻高位面を構成する託麻砂礫層はこの崖の北側では既往ボーリング資料によって、崖の南側では麻生田神社南東の小崖面で直接観察される(図3−1−14)。したがって、この崖は託麻砂礫層による託麻面の中に形成されたリニアメントであると考えられる。麻生田付近で崖の高度差は約 15 m に達する(写真3−1−8)。

このリニアメントは現在の北バイパスにほぼ平行し、直線状となって西側に約 500 m 連続した後、緩やかに湾曲しながら立田山地北西付近に至る。

(2) 立田山地 北西〜西側付近   ランク:LB

立田山山地北西では、山麓斜面と託麻低位面(M2)の境界部を形成する直線的な崖地形がリニアメントとして判読された。この崖地形は北西側に湾曲しながらきわめてスムースに連続する。現在、この崖は人為的改変を受けており、一部道路となっている(写真3−1−9)。

立田山西側では急崖がわずかに西側に湾曲して N−S 方向に連続する。付近は角礫および砂からなる旧い崖錐堆積物が分布する。現在この崖は人為的改変を受け、高さ約 5 m の擁壁となっている。

(3) 黒髪町駅付近   ランク:LD

この付近では 3 ヶ所のリニアメントが認められる。

@ 九州女学院正門前では、託麻低位面(M2 面)と保田窪面(L 面)を分ける、NE−SW 方向のリニアメントが認められる(図3−1−3)。託麻低位面と保田窪面との標高差は約 8 m ある(図3−1−4写真3−1−10)である。

A 済済黌高等学校の正門前では保田窪面(L 面)のなかに、リニアメント(NE−SW 方向)が認められる(図3−1−3図3−1−4)。リニアメントを挟んで、保田窪面の標高差は約 5 m(写真3−1−11)である。

B 見性禅寺の北側では沖積面のなかに、E−W 方向のリニアメントが認められる。北側低下で、標高差は約 0.5〜0.8 m(図3−1−5写真3−1−12)である。

(4) 熊本城・京町付近   ランク:LB

急崖が磐根橋から藤崎台球場の北側にかけて連続し、明らかにリニアメントが認められる。Aso−4 火砕流堆積面が変位しており、北側の Aso−4 火砕流堆積面が南側に傾動している。Aso−4 火砕流堆積物の分布高度差は人為的影響があり、球場横で 3〜4 m 、駐車場付近で 10 m 程度である。

(5) 花岡山・万日山付近   ランク:LC

花岡山〜万日山間の北側斜面の NE−SW 方向のものである。人為的改変により、擁壁を中心とした人工地形と化している。

(6) 万日山〜独鈷山北側周辺   ランク:LD

万日山と独鈷山の間の沖積面では、NE−SW 方向の、短い北西落ちのリニアメントが認められる。リニアメントを挟んで、約 0.5 m の段差が沖積面に存在する。

(7)城山付近   ランク:LB

城山の北西側に NE−SW 方向のリニアメントが認められる。現在、人為的に改変されている。

これらのリニアメントは、必ずしも基準面を変位させているものばかりで無く、段丘崖に平行するものや不明瞭なものも含んでいる。しかし、立田山断層の古い時代の活動に起因する可能性があることから、立田山断層のリニアメントとして抽出した。

表3−1−5 リニアメント一覧