(3)解 析

ダイポール・ダイポール配置を用いて測定される見かけ比抵抗ρaと見かけ充電率Mは、電極系の中心から深さ(n+1)a/2の位置に表示される(図2−2−13)。

        ρa=π×V/I×n×(n+1)×(n+2)×a ・・・・・・・・・(2.6)

である。

この方法によって得られた図を見かけ比抵抗断面図、見かけ充電率断面図という。

比抵抗と充電率のプロット地点はあくまでも電極の幾何学的関係できまるものであり、垂直方向の距離がそのまま深さを表すわけではない。しかし、定性的に地下構造を把握するには便利であるので、この表示法が広く用いられている。

充電率 Mは、一般に一次電位の数%の値であるので、Vの値は大きい方が望ましい。隔離係数nが大きくなるほどVは小さくなる。このために、電源からの出力電圧を適宜上

げなければならない。Vが1mVよりも小さくなるとデータの信頼性は極めて低くなる。

この条件から、本調査地区では、a=10mの場合、n=11が限度ということが分かったので、最大60mを探査の対象深度とした。

図2−2−13 ダイポール・ダイポール配置の疑似断面表示法

(各点に電極の組み合わせ。点の上が電位電極の番号、下が電流電極の番号)

平田・田中・木崎の各地区での解析結果を図2−2−14図2−2−15図2−2−16に示す。総測点数は829点である。

平田・田中地区の始点と終点では約30mの標高差があるが、それを無視して見かけ比抵抗・充電率断面図を描いている。ρaは全体的に独鈷山地区よりも大きい。

平田地区では、測線の設定上ボーリング地点付近の地下構造は把握できなかったが、それ以外ではρaが周囲に比べて低く、Mが相対的に大きいという条件を満たし、それが深度方向に連続する部分が3条見出された。

それらを北側からa線(地表への延長部の測点位置155m)、b線(同275m)、c線(同295m)とする。

@ a線とc線は南側傾斜、c線は北側傾斜の特徴を示す。

A a線では90Ω・m以下の相対的な低比抗部の幅は広いが、Mの高い部分の連続性は良くない。c線でのMの値は特に大きいものの、解析領域の境界付近にあるので、その連続性は評価できない。

B b線は、a線c線に比べ、最も断層らしい特徴を持つ。b線はρa≧200Ω・mの高比抵 抗部に挟まれた幅20mの領域に位置するが、特にMが大きいのは幅10mの区間のみである。大きなMゾーンは地表面から深度60mまで繋がっている。地形の傾斜を考慮すると正断層型と判定できる。

C a線とc線はb線の共役型の断層の可能性もある。

田中地区ではMの高いゾーンの連続性は認めがたく、例えば測点距離200mでの深度40m以深にM≧9mV/Vの部分が存在するが、その分布形態は塊状であり地表面まで連続しない。この様な連続性の乏しさは、断層破砕帯の固結度が高く(透水係数が小さく)、地下水の良好な流路とはなっていないことが考えられる。しかし、ρaの小さなゾーンの連続性のあるものが3条見出される。これらを北側からe線(地表への延長部の測点位置105m)、f線(同145m)、g線(同315m)とする。

@ いずれも北側傾斜と推定される。

A e線はトレンチの実施地点にほぼ対応するものであるが、地表面近くでρaの小さなゾーンの連続性は不明瞭となる。深度20m以浅でのρaは周辺の値と変わらなくなる。

B f線でのρa値も周囲に比べて僅かに大きい。

C f線より低比抵抗部の幅が大きいものがg線であり、この線に沿ってM≧5mV/Vの相対的にMの大きな箇所が点在している。

D g線は平田地区で最も顕著なアノマリーであったb線と連続する位置にあるとも考えられる。

木崎地区では図2−2−16に示す通り深度とともにρaが単調に増加するという傾向が顕著である。ρaの値は水平方向に連続性があるといえる。よって、断層らしき特徴は現れていない。

以上をまとめると、平田・田中地区では平田地区の方で断層らしき特徴が良く抽出され、両地区に共通するのは図2−2−12のリニアメントの位置に相当する正断層型のアノマリーであることがわかった。

図2−2−14 平田地区の測線における見かけ比抵抗断面図、見かけ充電率断面図

図2−2−15 田中地区の測線における見かけ比抵抗断面図、見かけ充電率断面図

図2−2−16 木崎地区の測線における見かけ比抵抗断面図、見かけ充電率断面図