(2)探査仕様

広域調査には電場と磁場または磁場のみを用いた方法があり、前者ではCSMT法(人工信号使用)、後者ではVLF−EM法(VLF送信局使用)、EM法(人工信号使用)等があり、測点密度にもよるが、断層位置の推定がより精度の良いCSMT法を実施するものとした。

このCSMT探査(Controlled Source Audio−frequency Magnetotelluric Survey)は、人工的に発生させた可聴周波数帯(数Hz〜数KHz)の電波を用いた地磁気地電流法である。この方法では地下50m〜数kmまでの電気抵抗値(比抵抗値)を捉え、地下深部での地質状況を推定することが可能となる。

探査法は次の通りである。まず測定は電磁波の送信と受信の2つに分けられる。

@送信・送信アンテナにトランスミッター(送信機)を接続し送信を行う。

・送信は事前に決めた時刻表をもとに決められた時間、決められた周波数で送信する。

A受信・測定点の各点にて電場と磁場とを同時に測定する。

・受信は送信と同一の時刻表をもとに行う。

次に今回の測定について述べる。

@ 調査測定の約6〜11km離れた位置に送信機を設置しアンテナを張る(図2−2−1−1図2−2−1−2)。このアンテナの長さは、直線距離で約1000〜2000mとした。

A 送信局は、周波数5120,2560,1280,640,320,160,80,40,20,10,5,2.5HZの合計12種類の周波数の電流を地盤に流す。

B 受信は、電場測定のため2本の電極を送信アンテナ(電流源)と平行に数10m隔てて設置した。電場を最大方向で捕らえるためである。また、それとは直交する方向 に電場センサーであるコイルを設置した。

C 測定は電磁波の電場と磁場とをこれらのセンサーを用いて各測定点の地表で同時に捕らえる。この際、電場測定用の電極の設置位置が測点に対応する。受信周波数は、送信された12種類の周波数を用いた。

表2−2−1写真2−1−3に主要な探査機材、図2−2−2に探査模式図を示す。

図2−2−1−1図2−2−1−2 測点及び発信局配置

表2−2−1 探査機材一覧

図2−2−2 探査模式図

写真2−2−1 CSMT探査送信トランスミッター

写真2−2−2 CSMT探査送信アンテナ

写真2−2−3 CSMT探査受信機

測線は、送電塔や市街地が雑音源となる熊本市街やピットを実施した平田地区は避けて、郊外で断層を胴切りにするように南北に近い方向で設置した。図2−2−1−1図2−2−1−2に示すように送電塔の影響の少ない益城町下陳を中心に北西が高遊原ゴルフ場、南東が柿迫に至る北西−南東に測線を設定した(A 測線)。

次にB 測線として、北甘木断層の延長の存在や南北方向の構造を把握する目的で、緑川下流の富合町小岩瀬を中心に北西に熊本市内田町まで、南東方向は富合町木原までとした。

各測点は500〜1,000m程度とし、A 測線では10測点、B 測線では15測点とした。

送信アンテナは共用可能な中間に益城町小池〜同町広崎間(A 送信アンテナ)、嘉島町上六嘉〜江津湖南端間(B 送信アンテナ)の2ヶ所に設置した。

本探査は、鞄本地殻が実施した。

実施期間は平成8年10月1日〜10月15日である。