(1)地質概説

(1) 層 序

調査地の地質については、図2−1−6に示す。また、第四紀の地質層序を表2−1−3に示す。

この地域の地質は益城町下陳の金山川以南と以北とで構成する地質が多少異なる。

金山川以南では、基盤岩であるペルム紀の水越層や白亜紀の御船層群が分布し、これを先阿蘇火山岩類や阿蘇火砕流堆積物が覆っている。しかし、金山川以北では、基盤岩が確認されず、阿蘇火砕流堆積物や溶岩が広く分布し、大峯東方〜南東方の山地では先阿蘇火山岩類が分布する。また、大峯西方の木山川沿いの山地には高遊原溶岩が広く分布し、布田川断層の北西側の高遊原台地は広い範囲で高遊原溶岩が分布する。

この地域で最も古い水越層は金山川の益城町下陳の上流に分布する。本層は粘板岩からなり、一般的な走向傾斜はN60゜〜80゜E、60゜〜80゜Nである。本層は先阿蘇火山岩類や阿蘇火砕流堆積物に覆われる。

白亜系の御船層群は船野山南西斜面や同山の赤井川左岸に分布し、主に泥岩、砂岩および砂岩泥岩互層からなり、南西−北東の走向で、南東に45゜前後で傾く同斜構造を示す。本層は船野山火山噴出物やAso−1火砕流堆積物に覆われる。なお、本層の露頭は布田川断層の北西側では認められない。

先阿蘇火山岩類は船野山、西原村東部の山地や長陽村立野の左岸側斜面に広く分布する。この岩体は輝石安山岩の溶岩や火砕岩からなる。立野付近ではAso−2火砕流堆積物に覆われる。船野山山裾付近ではAso−1火砕流堆積物や赤井火砕丘堆積物で覆われる。船野山の中腹以下では御船層群を不整合に覆う。

先阿蘇火山岩類の上には津森層と下陳礫層が分布する。両層ともに先阿蘇火山岩類に直接接している露頭はない。津森層は湖成堆積物で泥岩や砂岩からなり、金山川沿いに小規模に分布し、直接基盤岩の水越層を覆い、下陳礫層に覆われる。

下陳礫層は、砂礫層で金山川沿いとその支川に分布する。左岸側の下陳礫層は平田堤まで達しているが、平田堤より北西には分布しない。本礫層はAso−1火砕流堆積物に不整合に覆われる。

 Aso−1火砕流堆積物は主に溶結凝灰岩からなり、益城町杉堂から金山川間の山地に広く分布し、他に下陳から畑中にかけての畑中川沿いに分布する。本堆積物はAso−2、Aso−3火砕流堆積物に覆われる。また、船野山北麓では直接御船層群を覆っている。杉堂以東の木山川ではAso−2火砕流堆積物以上の地層に覆われ地窓状に散在し露頭する。

Aso−1・2間堆積物は、Aso−1火砕流堆積物とAso−2火砕流堆積物間に介在する砂礫層やローム層よりなる。この堆積物は数m以下の厚さである。本層はAso−2火砕流堆積物に覆われる。Aso−2火砕流堆積物は、基底部の薄い溶結凝灰岩部とその上のスコリア流から

表2−1−3 第四紀層序 なる。溶結凝灰岩は立野および西原村秋田〜杉堂間に分布するもので、数m以下の厚みの低溶結凝灰岩である。スコリア流は異質岩片を含み、黒色を呈する。表層は赤褐色を呈する。西原村葛目川の右岸山地や杉堂〜西原村下古閑間に広く分布し、下陳〜田中間では沢床付近に分布する。

本堆積物は、Aso−2火砕流堆積物やAso−2・3間堆積物以上の地層に覆われる。葛目川右岸ではAso−3火砕流堆積物や岩屑流堆積物に覆われ、杉堂〜下古閑間ではAso−4火砕流堆積物、下陳〜田中間ではAso−3火砕流堆積物に不整合に覆われる。

Aso−3火砕流堆積物は異質な岩片を多く含むスコリア流堆積物で、暗灰色を呈する。葛目川の左右岸の丘陵地や下陳〜畑中間の台地頂部に広く分布する。

本堆積物は、Aso−3・4間堆積物やAso−4火砕流堆積物に覆われる。

Aso−4火砕流堆積物は角閃石を多数含むことが特徴的で、木山川の右岸に広く分布し、下古閑〜西原村河原の台地頂部に分布する。他に西原村布田の低地に広く分布する。

この他に赤井火砕丘、大峰火山の噴出物が分布する。

前者は砥川溶岩と赤井火砕丘堆積物よりなり、Aso−1火砕流堆積物とAso−2火砕流堆積物間に噴出したものである。赤井火砕丘堆積物は地表にやや広く分布する。暗灰色の輝石安山岩溶岩からなる砥川溶岩は木山川の沖積地の下に広く分布すると推定されているが、地表では砥川付近と畑中川河床や右岸の福原付近に小規模な分布が見られる程度である。

大峰火山の噴出物は、高遊原溶岩と大峰火砕丘堆積物よりなり、Aso−3火砕流とAso−4火砕流間に噴出したもので、Aso−4火砕流堆積物に覆われる。

高遊原溶岩は、木山川右岸の高遊原台地をつくる溶岩で、給源である大峯の西斜面から高遊原台地にかけて広く分布する。大峰火砕丘堆積物は、大峯の山体をつくる堆積物で、大切畑ダムの右岸ではAso−2火砕流堆積物を不整合に覆う。

岩屑流堆積物は葛目川と長陽村立野間の山地に広く分布し、Aso−2火砕流堆積物の岩片を多く含む堆積物であり、Aso−2火砕流堆積物とAso−3火砕流堆積物間の山体崩壊堆積物と推定した。

他に段丘や扇状地の堆積物として、M2面堆積物、L1面堆積物、L2面堆積物、L3面堆積物が砂礫層、砂層やシルト層として確認された。

さらに西原村河原から葛目川にかけては先阿蘇火山岩類の角礫を含む礫混り土砂が厚く分布し、時代不詳の扇状地堆積物として区分した。

図2−1−6−1 布田川断層沿い地質平面図

図2−1−6−2 布田川断層沿い地質平面図

図2−1−7−1 布田川断層付近地質断面図

図2−1−7−2 布田川断層付近地質断面図

図2−1−7−3 布田川断層付近地質断面図