1−6−2 総合解析

1. 位置・形態

従来、立田山断層として図示されている断層は、今回の調査で活断層であることが確認された。立田山断層は少なくとも、熊本市楠五丁目から熊本市小島南方の白川河川敷付近まで、北東〜南西方向に延び、長さは約 14.3 km である。立田山断層の南西延長上の海域では、音波探査により完新世の堆積物を切る、最大累積量 5 m に達する複数の正断層が認められた。

断層の型は、地表地質調査とボーリング調査から、北西側低下の高角度の正断層である。水平変位成分の有無は不明である。

 

2. 活動履歴

1 最新活動時期

立田山断層は独鈷山地区、熊本市坪井四丁目付近および海域で沖積層を変位させているので、完新世に活動しており、独鈷山地区での最新活動は約 5,700 年前である。

2 変位量と平均変位速度

断層両側での同一地層の分布高度差を垂直変位量とし、各地層の年代から得られる平均変位速度は次のようである。

過去約  120 万年間  0.01〜0.04 m/千年

過去約 9〜12 万年間  0.11〜0.15 m/千年

過去約 4〜 5 万年間  0.10〜0.13 m/千年

過去約 0.8 万年間 0.5 m/千年

過去約 0.6 万年間 0.14 m/千年

これらから、最近約 10 万年間の活動度は B 級(平均変位速度は 0.1〜0.15 m/千年) である。それ以前の約 100 万年間の活動度はさらに約 1 桁小さかった(活動度 C 級)。

3 変位量と地震の規模

独鈷山地区の最新活動の変位量を 0.77 m と仮定する。これを一回の地震活動による変位量とみなすと、マグニチュード M は松田式から 6.4 に相当する。また、立田山断層全体が一回の地震で活動すると考えた場合、断層の長さ(14.3 km)から推定されるマグ ニチュードは松田式によると、M 6.7 になる。したがって、立田山断層によるマグニチ ュード M はおおよそ 6.5 程度であったと考えられる。

4 活動間隔

マグニチュード M 6.7 と最近 10 万年間の平均変位速度(0.1〜0.15 m/千年)から、松田式によると平均活動間隔は約 1〜 0.7 万年となる。しかし、独鈷山地区では 8,090〜 5,700 年の間(約 2,400 年間)に約 3.2 m の変位があり、変位量約 0.8 m のイベントが4回発生したとも考えられる。この場合では、平均活動間隔は 800 年程度となる。