4−1−1 位置

日奈久断層は益城町小池「熊野宮」の東側低崖から北東−南西方向の走行をもって、およそ3.0q南西に位置する御船町高木「菅原神社」東の谷に接する崖面へと連続し、南東に落ちた形態を示している。その延長は「御船川」右岸の沖積低地で、位置・形態とも不明となっている。

上記「小池〜高木」の南西部延長では、「緑川」とその支流により開析された台地(段丘含む)と沖積低地を横断しながらおよそ12.2q離れた豊野村下郷地区へと連続する。しかしながら、日奈久断層の位置が確定できるのは、上記12.2qの区間のうち、2箇所しかなく、各々0.5q程度の延長をもって把握されている。

一つは、「御船川」左岸(メロディ橋南)の台地部で、約500mの延長をもって並行する4条のリニアメントとして再びその位置が把握される。その形態については、北西落ちと南東落ちが一対となった地溝状の形態を示す。この南西延長部では「緑川」とその沖積低地、台地を含む3.0qの間において、日奈久断層は再び位置・形態が不明となる。

もう一つは、城南町土鹿野地区で「土鹿野公民館」北側の台地面に連続する崖面として把握される。その形態は南東落ちを示している。

 日奈久断層は、豊野村下郷「白岩山(221m)」南西側山麓部から「娑婆神峠」を経て小川町南小野で高速道路に突き当たる地点までの約3.0qの区間において、再び連続して位置が明確に把握される。その形態は、谷の屈曲から右横ズレが把握され、鉛直変位は、北西部豊野村下郷地区で、北西落ちと南西落ちの両方の形態を示し、娑婆神峠以南では、北西落ちとなっている。

小川町南小野から砂川に至る約1.25qの区間について、北東から順に整理すれば、「北部田公民館」裏手までの区間は、高速道路と重複する位置に存在するものと把握され、北西落ちの形態を示している。北部田公民館から南東方向の延長は、扇状地堆積物の分布域に断続的な崖地形として追跡されるが、断続的な崖は、全て北西落ちの形態を示している。今回のボーリング調査結果から、日奈久断層の本体は、さらに海側の沖積低地面の中に潜在している可能性が強く、その意味から、主断層の位置を確実に把握しているとは言い難い。

小川中学校正門付近は、基盤と高位沖積面の境界部に断層の通過を推定しているが、当地域については、南西側延長部でのボーリング資料(平成9年度 原子力発電技術機構)によりその存在が確認されている。資料によれば、北西落ちの形態が確認されている。

砂川以南で日奈久断層の位置が確認されたのは、僅かに次の2地区である。

一つは竜北町高塚の台地前面でおよそ1.0qの区間について、断続的に連続する北西落ちの低崖として把握されている。しかしながら高塚地区における断層の走行は西北西−東南東を示し、日奈久断層北西部の走向から方向を転じており、連続性については把握されていない。また、今回のボーリング・トレンチ調査結果からは、横ズレの運動形態が想定されたが、日奈久断層の本体はさらに海側に潜在しているものと判断され、その位置については把握できなかった。

もう一つは、宮原町栫から八代市川田町に至る約3.0qの区間において、扇状地面に生じた断続的な北西落ち崖面として、その位置が把握されている。しかしながら、今回のボーリング結果からは、断層北西側の地層に累積性の確かな沈降の証拠が確認されなかったことから、日奈久断層の本体はさらに海側に位置する可能性が指摘される。

八代市川田町からさらに南西側の延長については、位置及び形態を確定するデータは得られていない。

今回の調査で把握された日奈久断層の位置については、上述したとおりであるが、その形態と規模について、以下に整理した。