4−4 音波探査結果

吉良川断層・行当岬断層を対象として室津港から羽根岬までの範囲において測定を実施した。音波探査測定記録を付図2−2−1付図2−2−2付図2−2−3付図2−2−4付図2−2−5付図2−2−6付図2−2−7に示した。

湾岸陸上部近くは,断層活動による変位を確認できる堆積層が薄いため,海岸線より約5〜25q離れた地点にて測定を行った。

測定実施日の海上の気象条件から,測定記録には海のうねりによる凹凸が発生したが,測定結果では,比較的明瞭で連続性の良い反射面が認められた。

吉良川断層を対象として,測点B076〜B068の断面について地質構造の推定を行い,地質推定断面図を図4−9−1図4−9−2に示した。

行当岬断層を対象として,測点B068〜B064の断面について地質構造の推定を行い,地質推定断面図を図4−10−1図4−10−2に示した。

なお,各測線の推定地質断面を付図3−2−1付図3−2−3付図3−2−4に示した。

本地域の海域での地質構造の推定に,「室戸岬海底地質図(地質調査所)1986」を参考にした。本調査地周辺海域部の地質状況を図4−11に示した。この海底地形図からは,吉良川断層,行当岬断層は認められない。

測定記録から,主に2反射面が認められ,特に第1反射面としたものは全般に明瞭で連続性が良い。また,その下部の第2反射面は明瞭さに欠けるものの比較的連続性の良いものであった。

地質推定断面の作成においては,海底面下の2反射面に注目し,その連続性を追跡し,地質構造の推定を行った。反射面から推定した地質を表4−1に示した。主として3層に区分することができ,第1層,第2層は沖積層と推定される。その中で第1反射面は探査海域全域にわたって見られる沖積層中の鬼界・アカホヤ火山灰(K−Ah火山灰)に相当する層と考えられる。第2反射面は上面が起伏に富む洪積層あるいは基盤岩(四万十帯室戸半島層群の砂岩・泥岩互層)に相当するものと考えられるが,その詳細については別途検討が必要であると考えられる。

1)吉良川断層(図4−9−1図4−9−2図4−9−3参照)

行当岬から羽根岬にかけての吉良川断層にほぼ直角に交差する測線であり,水深は約40〜60mである。測点B071東方を除き,海底面下数〜10mに明瞭に反射面が認められ,連続性が良いのが特徴的である。また,東方においても追跡可能である。測定結果から堆積構造が分断された形状は認められない。また,その下部の第2反射面も比較的明瞭であり,その連続性が良い。

海底地形は,海底地質図に示された背斜・向斜軸に一致していることが認められた。

以上の結果から,吉良川断層の海上延長と考えられる海域には広くK−Ah火山灰層が追跡され,このなだらかな起伏を有する反射面には断層で切られた形跡はみられない。このことは,少なくとも最近6,300年間にわたり,この断層の活動がなかったことを意味するものと考えられる。但し,音波探査の分解能は30p程度であり,これ以下の断層変位はとらえることはできない。

2)行当岬断層(図4−10−1図4−10−2参照)

行当岬から室津港にかけての行当岬断層に交差する測線であり,水深は約15〜40mで室津港(東方)にかけて浅くなる傾向にある。第1反射面の連続性が比較的良い傾向にあるが,第2反射面はさほど明瞭ではない。

本調査地においては,表層に礫層が分布することから音波の透過性が低く,詳細な堆積構造の変位の有無を確認する事はできなかった。