4−2 空中写真判読による段丘面の対比

行当岬東の元川をはさんで,海成段丘高度に不連続が認められるため,元川沿いに活断層の存在が推定されている(確実度U・行当岬断層)。変位量はM1面段丘高度で南落ち50m(吉川ほか,1964),L1面段丘高度で南落ち7m(金谷,1978)とされている。このうちL1面段丘高度の不連続については,前杢(1988)が段丘面区分の再検討を行い,不連続は認められないという結果を得ている。

更新世段丘については,吉川ほか(1964)による元川をはさんで南北の段丘面対比(図4−1)に問題がある可能性がある。元川より南側には,下部中新統の泥岩・頁岩質の室戸岬オリストストローム帯が分布するが,これより北側には始新統からなる室戸半島層群が分布する。このように基盤の四万十層群に時代のギャップがあるため,段丘発達や開析度にも差異が生じる可能性がある。

以上のような観点で元川付近から室津川まで空中写真判読を行い,段丘面の対比を新たに行った(図4−2)。元川より南で吉川ほか(1964)がH2面とした段丘面をM1面とすることによって,段丘面高度に不連続が認められなくなる(図4−3)。段丘堆積物がほとんど分布しないこの地域において,段丘堆積物の地質学的な対比・検討は困難である。しかし行当岬断層によってM1段丘面が50m以上変位しているとすれば,断層線上には明瞭な断層変位地形が分布してもよさそうであるが,この地域ではまったくそのような地形が認められないなどから考えると行当岬断層は段丘面対比の間違いから活断層と認定されていた可能性が強い。

既存文献にしめされている活断層位置とヘリコプターから撮影した写真の撮影位置を図4−4に示す。