2−1−2 五助橋断層西滝ケ谷地点

五助ダム上流のさらに上流部に位置する西滝ケ谷地点では, アカホヤ火山灰層 (約6300年前の広域テフラ) が断層変位している露頭が丸山ほか(1997) により報告されている。しかし, 草木により断層の大部分が覆い隠されているため, 今回の調査では, 露頭を整形し (図2−5), 詳細な観察および火山灰分析などを実施した。

写真2−4は, 露頭整形後の全景を写したものであり, 写真中央部には明瞭な逆断層が表れた (写真2−5) 。露頭の詳しい観察記録は, 図2−6に示したとおりであり,基盤上の堆積層がA〜G層までの7層に分けられ,堆積層を切る3本の断層を確認することができた。

断層Tは,E層以上には変位を与えていないのに対し,断層Uは,E層からアカホヤ火山灰層を含むC層にまで変位を与えている。ただし,A,B層には変位を与えていない可能性が高い。断層Vは,アカホヤ火山灰層まで変位をあたえているものの,変位量は 0.5m以下と小さく副断層の可能性がある。

この中で注目されるのは断層Uであり,E層とD層境界を約3m,アカホヤ火山灰を約1.5m上下方向に変位させている。E層とD層境界は,アカホヤ火山灰の2倍の変位量をもっていることから,この断層はD層堆積以後少なくとも2回活動した可能性が高いと判断される (図2−7) 。

今回の調査では, アカホヤ火山灰以外に堆積年代の決め手が無く, そのため詳しい最新活動時期,活動間隔については明らかにはできなかったが,五助橋断層が現在も活動的で繰り返し活動していることが明らかになった。

図2−5 西滝ケ谷地点露頭整形調査範囲

写真2−4 西滝ケ谷地点露頭整形後の全景 (向かって左が上流で, ほぼ北の方向)

写真2−5 西滝ケ谷地点・断層U付近の状況

図2−6  西滝ケ谷地点露頭のスケッチ (詳細は付図−2を参照)

図2−7  西滝ケ谷地点露頭から読み取れる断層変位